800枚の鏡を使って太陽光で鶏肉を焼く!?タイの焼き鳥屋
記者が幼いころといえばまだファミコンも登場しておらず、遊びといえば手近にあるものを利用し、工夫して遊ぶのが常。
個人的に好きだったのは「虫眼鏡を使って紙を焼く」ことだった。虫眼鏡で太陽光を一点に集中させ、高温に熱し発火させるというもの。
小学校の授業で覚えてからというもの、毎日のように虫眼鏡を手に取り、放火魔よろしく熱心に紙を発火させる小学生だった。
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■レンタカーを借り2時間かけて焼鳥屋へ!
所変わってタイのとある地方になると、太陽光を使って鶏肉を炙り焼鳥にするというからアメージング! 場所は首都バンコクから南西約170kmにあるペッブリー県。車で向かうと2時間ほどはかかってしまう。
焼鳥を求め車で2時間も走るなんて素っ頓狂なこと、相当な焼鳥好きであっても実行しないだろうが、噂の真相を確かめるべく、わざわざレンタカーを借り2時間かけてソーラー焼き鳥屋に向かった。
現場に到着すると噂の焼き鳥屋は一般的なタイ食堂のような外観。
1点だけ他と異なるのは、道路を挟んだ広場に巨大な鏡が設置されていること。陽の光りを集める無数の鏡を集めたオブジェがあったのだ!
いや、これはオブジェではなくあくまでも調理器具である。筆者はさっそく焼鳥をいただくべくオーダーした。
「焼鳥(ガイヤーン)を1人前!」
オーダーするや店主のシラーさん、浮かない表情を浮かべた。
「今朝、雨が降っていたから鶏が焼けなかったんだ…」
焼鳥屋で鶏肉がないなんて、そんなバカな!
レンタカーを借り、2時間もかけて来店した筆者はどうなるの!?
「いま晴れてるから、今から焼いちゃえばいいんじゃないですか?」
「明日おいでよ。明日は朝から晴れるみたいだから大丈夫」
明日またレンタカーを借りて来るほどヒマじゃないっす…。粘り強く交渉してみたがこの日は無理だと言って聞いてくれない。しかもシラーさん、忙しそうに振る舞い、ついにはどっかへ行ってしまった…。
仕方がない。とにかく撮影できるものはしておこうと至る所でシャッターを切った。そして店の外観にカメラを向けたそのときだった。
看板に誰かの写真が掲げられ、よく見ると日本語が記載されている。
タイで活躍している日本人ライター髙田胤臣氏の写真とともに、彼が執筆した記事が店頭にデカデカと掲げられていたのだ。後日、記者は高田氏にコンタクトを取り、実際に食べたというガイヤーンについて訊くことにした。
一口食べた印象は、とにかく柔らかかったことです。完全に火が通っているのに生肉のような弾力で、しかもジューシー。ここのガイヤーンは今まで食べた中で一番美味しかったです
高田氏いわく、太陽光を集めるために使っている鏡は800枚。それだけの鏡で太陽光を集めているといっても、炭火やガスの火力には及ばず、じっくり時間をかけて焼く必要があり、蒸しているような仕上がりになっていると言う。
高田氏から、実際に焼いているシーンを撮影した写真を拝借した。シラーさんはゴルフキャディーのような帽子をかぶり、芝目を読むかのように鶏肉を注視している。
自動回転機で鶏肉をくるくると回しながら焼いていくそうだが、ときどき停止させ、焼き具合をチェックしているという。
このような方法で鶏肉を焼いている店は、タイでは他に聞いたことがない。タイ在住歴の高田氏が絶賛するほどのガイヤーン。食べられなかったことが悔やまれる…。
「ガイヤーンパランセーン アーティット」
TEL:085-704-3716,03-2428-250
OEPN:11:00-20:00(基本無休だけど焼鳥がないことも)
MAP:https://goo.gl/maps/kTBWbMBEfu62s
(取材・文/しらべぇ海外支部・西尾康晴)