【教育コラム】思春期男子の見守り方
■荒れるのは本人の意思ではない
ただでさえ母親からしてみると男の子の生態は謎だらけなのですが、さらに中学生くらいになるともう意味わかんないという感じになるでしょう。言葉遣いが荒くなったり、常に不機嫌だったり、かと思えば信じられないバカをしでかしたり……。
別に親を困らせようと思って意識的にやっているわけではないんです。何者かに操られているんです。何だと思いますか?
①宇宙人
②地球の磁場
③ホルモン
答えはもちろん③のホルモンです。ホルモンといってもホルモン焼きのホルモンではありません。
思春期男子の体の中ではあるホルモンが大量に分泌されて、そのホルモンによって本人も翻弄されているんです。そのホルモンこそ、男性ホルモンの筆頭として有名なテストステロンです。聞いたことありますか?
睾丸でつくられる男性ホルモンのひとつで、小学校の高学年くらいから分泌量が増えます。
テストステロンが増えると、筋肉や骨格が発達し、声変わりが始まり、陰毛やわき毛などが生え、陰茎や睾丸も発達します。少年の肉体から、たくましい成人男性の肉体へと変わっていきます。
性的な成熟が促進され、精通が始まります。同時に性的衝動も強まります。名実ともに、「男の子」を「男」に変える力をもつホルモンがテストステロンなのです。
関連記事:「シルバー民主主義」を脱するために今すぐできること
■男性ホルモンは心へも影響する
テストステロンは、精神面にも影響するといわれています。テストステロンが増えると、攻撃性や破壊衝動が増したり、競争心がかき立てられたり、縄張り意識が強まったりという変化が見られるようになります。
何らかの刺激によりテストステロンが急激に増えると、興奮のあまり分別を失うという事態も引き起こします。まるで動物のオスのような状態になることもあるのです。だから「わけがわからない」のです。
また、テストステロンの豊富な人は、前向きで、生気にあふれ、魅力的に見えます。女性を引きつけるフェロモンとも関係しており、テストステロンが多い男性はモテるというのも通説になっています。
テストステロンが変えるのは、筋肉や体毛など、肉体だけではありません。第二次性徴期は、胎児期に次いでホルモンの影響による身体変化が大きな時期だといわれています。
胎児期にテストステロンが分泌されるか否かで、男女の身体構造や脳の構造に変化が起きます。同様のことが思春期にも起きています。
身体構造の変化は先に述べた通りです。かつ、思春期には、テストステロンなどの性ホルモンのはたらきにより、脳の構造自体に変化が生じるらしいということもわかってきています。
性ホルモンのレベルと、記憶を司る海馬や扁桃体のボリュームには関連性があり、性ホルモンの分泌のバランスが変わることで、男性はより男性らしい脳になり、女性はより女性らしい脳になるというのです。
■テストステロンは25歳ころまで増え続ける
思春期男子は、心身ともに急激にアップデートされているということです。だからたくさんのバグが生じるのです。コンピュータのOSのアップデートと同じですね。
テストステロンの分泌量は25歳くらいがピークといわれており、それまで増え続けます。では、25歳まで思春期の暴走が続くのかというと、そうではありません。徐々に、暴走しそうになる自分をコントロールする分別を身につけていきます。
そのカギとなるのが脳の前頭葉です。前頭葉とは、「人間を人間たらしめている部位」といわれており、理性や分別を司ります。ここが盛んに発達する時期もまた、思春期なのです。
ただし、試作段階の車の両輪は、最初からバランス良く回ってくれるわけではありません。それが思春期の男の子の体の中に生じるアンバランスの正体なのです。
そのアンバランスの中で本人がいちばん戸惑っているんです。この時期にたくさんのバカをしでかして、失敗して、そこから自らをコントロールする術を学んでいくのです。ですから、大人はそんな彼らをおおらかな目で見守って上げてほしいと思います。
<関連書籍> 『「思春期男子」の見守り方』(おおたとしまさ著、PHP研究所)
何を考えているのか、どうしてそんなことをするのか…。
思春期の男の子は、特にお母さんにはわからないことだらけ。本書は、ジャーナリストとして多くの現場を取材し、心理カウンセラーでもある著者が、男の子の心と体の仕組みだけでなく、悩ましい行動への具体的対処法まで解説したもの。
男の子に対する疑問が解け、不安を解消してくれる1冊!
※この記事は全国のFMラジオネットワークJFNの「OH! HAPPY MORNING」のコラボ企画です。記事の更新は隔週木曜日10:30am。記事更新の約10分前から、おおたとしまさがこのラジオで記事と同様の話をおしゃべりします。
合わせて読みたい→【教育コラム】男子校あるある
(文/おおたとしまさ)