【レスリング】吉田沙保里は「合掌を許した審判団」に敗北
「女子レスリングのレジェンド」こと吉田沙保里の五輪4連覇はならなかった。
それでも堂々たる銀メダルである。最後まで攻めの姿勢を崩さず、積極的にタックルを取りに行った姿勢は大いに評価されるべきだろう。
しかし決勝戦そのものの内容は「見習ってはいけない試合」だった。
ただこれは吉田ではなく、対戦相手のヘレン・マルーリス(アメリカ)に原因がある。
■絶対にやってはいけない「合掌」
マルーリスは、吉田に対して頻繁に「合掌」を組んでいた。
合掌とは、以下の画像のような手の組み方である。
じつはこうした組み方は反則ではないが、普通なら「絶対にやってはいけない」とコーチに指導される。その理由は危険だからだ。もしこの状態でマットに倒れたら、簡単に指を折ってしまう。
現に大相撲の取り組みで合掌など、まず見かけない。だが、アメリカのレスリング選手はなぜかこのような組み方を多用するようだ。
その上マルーリスは、吉田の指を頻繁に掴みに行っていた。合掌組みと合わせて、レフェリーからたびたび指導されている。そして吉田は、この露骨なフィンガーロックをかなり気にしていた感じすら見受けられた。
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■安全な競技のために
そもそも、合掌組みによるグリップ力はそこまで強くはない。にもかかわらず、一旦かけてしまったら自分の思ったタイミングで解くことができないという大きな欠点がある。
それを防止するとしたら、レフェリーが積極的にコーション(警告)を与えていくしかないだろう。口頭での指導だけでは限界がある。
これは「吉田に金メダルを与えるべきだ」ということではない。合掌やフィンガーロックを許してしまったら、レスリングの安全性に大きなヒビが入ってしまう。2024年からは女子グレコローマンが正式種目になるという話もあるが、合掌が事実上許されている状態でグレコローマンの試合を行えばいずれ重傷者が出てしまう。
競技の安全性なくして輝かしい試合はない。
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(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一)