静岡市民歓喜!清水エスパルスJ1復帰から見る「スポーツの意義」
静岡県静岡市は、全国的にも「サッカー王国」として知られている。
だが、2016年は試練の年だった。「Jリーグの名門クラブ」だったはずの清水エスパルスが、J2に降格してしまったのだ。
これについては、市の広報誌でも大きく取り上げられたほど。ヨーロッパの諸都市などはとくにそうだが、「おらが町のチーム」が不振に陥った時は行政を巻き込んだ一大事に発展してしまう。
しかもエスパルスはJリーグ創設期からの「名家」であり、早急のJ1復帰は至上命題だったのだ。
■苦難の先の勝利
2016年11月20日。静岡市民はこの日を永遠に忘れないだろう。
徳島県鳴門市のポカリスエットスタジアムで行われた、VS徳島ヴォルティス戦。エスパルスは後半に勝ち越し、2-1のスコアで白星を勝ち取った。
これにより、J2年間2位を確定させ来年度J1昇格の権利を獲得。この試合は日曜日ということもあり、大手家電量販店のテレビコーナーには多くの市民が押し寄せていた。
後半ロスタイムの4分間、この店舗はスタジアムと同様の熱気に包まれた。何しろ、わずか1点差である。サッカーにおける「最後の数分」は、まるで永遠のような長い時間だ。
だからこそ、試合終了のホイッスルはなおさら胸に響く。その直後に聞こえたのは、安堵の溜め息と拍手、そしてエスパルスJ1昇格記念臨時セールのアナウンス。静岡市民が希望に満ちた2017年を勝ち取った瞬間だ。
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■静岡ダービー復活へ
一方で、同じ静岡県下の名門クラブであるジュビロ磐田もJ1残留を確定させている。
つまり来季は「静岡ダービー」が実現するということだ。じつに4季ぶりである。
エスパルスとジュビロの試合は、「県下企業同士の戦い」でもある。静岡市と磐田市、それぞれ産業基盤が異なるからだ。
磐田市に本所を置く企業といえば、何と言ってもヤマハ発動機。この企業が磐田市民に提供している福祉と雇用の規模は、計り知れないものがある。
だが静岡市の場合は、物流王手の鈴与グループやはごろもフーズ、市内に一大製造拠点を置く三菱電機などが経済の中核を担っている。互いの主力産業の結晶がサッカークラブであり、静岡ダービーはそれらのすべてを巻き込んだ一大決戦なのだ。
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■スポーツのある日常
日本とヨーロッパのサッカークラブを比較する上でも、「そのクラブの本拠地がどういうところか」は重要だ。
たとえば、ヨーロッパの工業地帯や炭鉱都市にあるクラブは「労働者のため」の色合いが非常に強い。決して豊かとは言えない肉体労働者たちが、日曜日の昼にサッカーをしていた。それがクラブ創設のきっかけになったというエピソードは、よくあることだ。
日本の場合は、ヨーロッパのような厳格な階級格差はない。イングランドサッカーは中産階級以上の人々を寄せ付けない雰囲気が今もあるのだが、日本には「労働者と企業経営者が一丸となって応援するクラブ」が存在する。これは誇るべきことだ。
「スポーツのある日常」は、我々の心に潤いを与えてくれる。
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(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一)