魚の氷漬けスケートリンク「お魚がかわいそう」と批判殺到→中止に
福岡県北九州市のテーマパーク『スペースワールド』のある企画が炎上し、急遽中止が決定した。それは、アイススケート場に5,000匹の「魚」を氷漬けにした「氷の水族館」だ。
■ジンベイザメも凍らせた?
スペースワールドのスケート場は、アジなどの食用魚の中でも「売り物にならない規格外のもの」を市場から仕入れてリンクの中に凍らせたという。
一時ネット上で流れた「生きた魚をそのまま凍らせた」というのは、誤報のようだ。だがスペースワールドでは「魚の群れを矢印形にする」「巨大なジンベイザメ(写真)まで凍らせる」演出もしていた。
スペースワールドは「奇抜な演出」を狙っていたようだが、やはり一般客には「グロテスクな趣向」と映ってしまった。
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■倫理的問題はどこに?
中には「魚がかわいそう」という批判もある。だが、よく考えればこれは市場で扱われていた魚だ。それに対して動物愛護の発想を当てはめるのは、果たして適切だろうか?
さらに突き詰めれば、市場で購入した魚を食用以外の用途で使うことに倫理的問題があるのか、ということになる。
アジをパック詰めにして鮮魚コーナーの冷蔵庫に並べることと、スケートリンクの中にディスプレイとして収めてしまうこと。その両者にどのような差があるのだろうか。
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■日本人と「食料」
日本人は、「食べるもの」に対して特別な感情を持っている。
たとえば、家族全員でも食べ切れない量の料理を最初から作ることは日本人にはできない。「食べずに捨てる」という行為に、大なり小なりの罪悪感を感じるからだ。
だが、世界には「残飯をたくさん出すのが豊かさの証明」と考える国も存在する。そうした地域では、最初から食べ切れないだけの料理を敢えて作るのだ。
すなわち、「食用魚だからこそ粗末に扱ってはいけない」と考えるのが日本人で、その根底には「他の生物の命をもらって暮らしている」という独特のアイデンティティーが見え隠れする。
「普段から魚を食べている(殺している)のに、スケートリンクの問題に怒るのはおかしい」という反論もあるかもしれないが、「普段魚を食べているからこそ、その価値や重みを知っている」と返すこともできる。
今回の炎上騒ぎの根底にあるのは、「どんなものにも命がある」とする我々日本人の発想ではないだろうか。
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(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一)