不動産の「釣り物件」 おとりチェッカー活用などの自衛が重要
最近話題になっている「おとり物件」。不動産仲介業者が利用者を来店させる目的で、実際は取引できない架空の物件情報などを掲載する、“釣り”物件のことだ。
昔から使われてきたと言われるこの手法、なぜ今になって問題がクローズアップされているのか?
要因はこうした事案に対するマスコミ報道のほか、不動産公正取引協議会による本格的な対応強化に加え、賃貸物件情報をできる限りリアルタイムに掌握するデータベースなどで、ビッグデータの解析が行えるようになり、実態を伴わない物件情報の掲載が洗い出されるようになってきたからだ。
■賃貸物件広告の半数以上がおとり物件?
賃貸物件情報のビックデータ解析を行っている企業のひとつ、イタンジ株式会社が運営するnomadの「おとり物件チェッカー」の調査データによると、2015年10月から2016年11月の間に寄せられた、物件問い合わせ数はのべ91,131件。
それら問い合わせがあったものを、同社がデータベースや個別問い合わせなどを駆使して確認を行った結果、すでに契約済みで、本来であれば賃貸契約募集をしていないはずの物件が約5割程度。
人気物件のため“タッチの差で、決まってしまった”というものが含まれる可能性もあるが、じつに半数程の物件が、案内することのできない物件であったという。
どういった手法で、こうした「おとり物件」が掲載されることになるのか? ある不動産仲介業者は、悪質な手口の例をこう語る。
「何度か不動産公正取引協議会からも勧告を受けている、悪質な仲介業者がありました。既に借り手のついた物件をポータルサイトに掲載するだけでなく、自社で購入した区分所有するマンションの1室を社員などが居住。実際に借りることはできない状態で、格安で掲載するという手法です。
オーナーも、管理も、仲介も、すべて自社になるため、調べても裏取りをすることが難しいという、かなり悪質な手法ですよ」
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■時間のムダや希望と違う条件になるケースも
実際に「おとり物件」を経験した人の体験はというと…
「渋谷エリアで物件を探し、大手ポータルに掲載している物件に問い合わせをしました。内見可能とのことなので、翌日仲介会社に行くと『実はリフォーム工事が入っていて今日は、見られません』と。
違う物件を勧められたけど、問い合わせた物件よりも条件が悪かったため、断って帰宅。仲介店舗への往復も含め、せっかくの休日の時間がムダになりました」(20代・男性)
「地方から大学入学で上京する際に、気になる物件を検索。登録している仲介会社に連絡をしたら『その物件は空室で内見可能なので、来店してください』と言われました。
飛行機で上京し、約束した日に仲介会社を訪問すると、予定していた物件については『管理会社と連絡がつかず鍵がない』『その物件は今朝、申し込みが入ってしまった』などと言われ、若干不信感を感じたものの、東京にいられる期間も短く、すぐに物件を決めないといけなかったため、他に勧められた条件の異なる物件を借りることになってしまいました」(10代・女性)
この他にも、同じ物件情報を複数の業者が掲載しており、各社の案内が異なることで「おとり物件では?」と不信を抱いたケースなど、レベルは異なるが被害に遭った、もしくは遭いそうになった話が多く聞かれた。
業界内でもこの状況を問題視し、改善の乗り出す動きも大きくなってきている。その一方で悪質な業者の存在を考えると、利用者の側も「おとり物件チェッカー」などのサービス活用によって、自衛手段を講じることも必要といえそうだ。
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(取材・文/しらべぇ編集部・くはたみほ)