アユが泳ぐようにスイスイと飲める『鮎正宗』 湧水仕込みを受け継ぐ品質一途の酒蔵から
蔵の敷地内に湧く仕込み水が飲みやすさと旨さの決め手。
越後富士とも呼ばれる秀麗な妙高山。残雪がその山腹に跳ね馬の影を描く頃になると、あちこちで田起こしの作業が始まる。そんな妙高山の四季折々の姿を望める妙高市は、スキーと温泉で知られる高原リゾートでもある。
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■清流を泳ぐ魚を連想させる『鮎正宗』
『鮎正宗』の蔵はこの妙高市の山あい、猿橋地区にある。長野県の県境に近い深い自然の中に、かやぶき屋根の堂々たる佇まいを見せて建っている。
入り口には樹齢300年以上と言われているヒノキ。移築して140年ほどの古民家は、釘を1本も使っていないケヤキづくりの建物で、屋根の厚さは通常の倍ほどはあろうか。中に入ると、太いケヤキの梁が幾重にも組み上げられた屋根裏が見事だ。
「多い時には2mも積もる雪に耐えているわけですからね。このあたりは冬ともなれば県下有数の豪雪地帯で、町全体が大量の雪にすっぽりと包まれます」と、5代目当主・飯吉守社長の弟である飯吉富彦常務は説明する。
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■ほんのり甘い旨酒は湧き水から
創業は明治8年、初代・飯吉彦左衛門氏が良質の湧き水で酒を醸しことが始まりと伝わる。 代表銘柄は『鮎正宗』。アユはきれいな川にすむ魚で姿がよく、よい香りがするので「香魚」とも書く。
その品のある名前にふさわしい香りと味わいの酒として、近年注目度が高い。ちなみに関東信越局、全国の鑑評会でもたびたび入賞、第73回関東信越国税局酒類鑑評会では最優秀賞を受賞している。
『鮎正宗』の名が誕生したのは、昭和初期。リゾート地の妙高は赤倉に滞在した伏見宮家の皇族・若宮博義殿下が、近くの清流でアユ釣りをした際にお世話役として同行し、命名していただいたのがきっかけという。以来、銘柄、社名としている。
ほのかな甘味を感じさせながら、雪解け水のようにきれいな後味が広がる『鮎正宗』。その酒質はさらりとした甘さのある湧き水に負うところが大きいようだ。