「フランスは北野武監督に恋している」 日本文化をフランスの「知の巨人」が語る
ジャック・ラング元文化大臣に日本文化や映画のフランスでの評価について迫る。
ミッテラン政権で文化大臣を12年、国民教育担当相を2年務めたジャック=ラング「アラブ世界研究所」所長。
同氏と筆者は、前々からの知り合いだ。ラング氏といえば深い教養人として知られ、北野武にフランス最高の栄誉・レジオンドヌール勲章を授与したことで知られている。
『ルーヴル美術館の闘い—グラン・ルーヴル誕生をめぐる攻防』や『マルローへの手紙』『ネルソン・マンデラ』、『ミケランジェロ』と著書の多くが邦訳されている。氏の研究所でのインタビューに加え、後日、書面でも質問して回答を得た。
■フランス人は北野映画に恋している
———最近のラングさんと言えば、北野武氏にフランス最高の栄誉・レジオンドヌール勲章を授与した姿が、日本の視聴者の目に焼き付いています。
ラング:思い出させてくれて、ありがとう。 私は日本映画の巨人である黒澤明に感服しています。黒澤にも、東京の彼のスタジオでレジオンドヌール勲章を授与しました。
そして何より、フランスの援助があって制作された彼の最後の映画『乱』を、パリのポンピドゥーセンターの正面で上映したのです。
そして、北野ですね。彼は驚くべき人物です。別格です。 日本において北野は、テレビを通して、彼の番組、おかしな笑い、ユーモア、言葉のセンス、数々の事件によってとても有名です。 フランスにおいて北野は、彼の映画によって名が知られています。
『HANABI』『ソナチネ』『アウトレイジ』『菊次郎の夏』などなど。我々は彼の映画が、もしかしたら日本人以上に、大好きなのです。
日本人と比べても圧倒的に、フランス人は北野の映画に恋をしています。我々にとって彼はとても偉大な映画人なのです。 実際、私は数ヶ月前にパリで彼にレジオンドヌール勲章を授与しました。
その場にいた人はみな、この偉大な芸術家に対する賞賛と感謝の瞬間を共有できたことを大変嬉しく思いました。
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■日本文化は歴史に裏打ちされた価値がある
———日本文化についての評価はどうですか?
ラング:一言で言えば、歴史に裏打ちされた価値があり、すばらしい。古くからの文化をもつ、独創的で特異な力強い国です。その意味で、今年、ジャポニズムをテーマにパリ及びフランス各地で催しが開かれたことをとてもうれしく思います。
これは非常に重要なことです。私は日本の友人であり、日本の芸術に恋をしています。提案されたプログラムはすばらしいものです。
歌舞伎、文楽、能といった日本の古典劇だけでなく、雅楽のような日本の伝統音楽、さらにはより現代的な絵画、映画、芸術、建築などをパリで鑑賞することができたのです。
日本はきわめて創造性に富んだ国です。 フランソワ=ピノー氏がパリの真ん中に建設予定の文化総合施設『ブルス・ド・コメルス』で、内装の整備を現在担当しているのは、ご存知のように建築家の安藤忠雄氏です。
これもパリ中心部にある、サマリテーヌ百貨店の変貌に貢献したのは、建築家の妹島和世氏です。私自身、フランス北部にあるルーヴル美術館ランス別館の構想を妹島氏に頼み、彼女はすばらしい美術館を手がけました。