坂本龍一さんら著名人や地域住民から批判殺到の外苑再開発問題 9割が「工事続行にノー」
故・坂本龍一さんが小池百合子都知事に反対の手紙を送り、作家の村上春樹氏らも反対を表明している神宮外苑の再開発計画だが…。
周辺住民から、これほど賛成の声が聞かれない再開発計画も珍しいのではないだろうか。
数々のドラマなどで象徴的なシーンを演出してきた絵画館前のいちょう並木、神宮球場、秩父宮ラグビー場などが位置する明治神宮外苑で700本以上の樹木を伐採し、高さ200mに迫る超高層ビルを建設するという再開発の工事が始まっている。
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■坂本龍一さんが「反対の手紙」
今年3月に亡くなった音楽家の坂本龍一さんは、生前の2月24日、小池百合子東京都知事らに手紙を送付。
現在の計画は「持続可能なものとは言えない」とし、「持続可能であらんとするなら、これらの樹々を私たちが未来の子供達へと手渡せるよう、現在進められている神宮外苑地区再開発計画を中断し、計画を見直すべきです」と提言した。
坂本さんの死後、後藤正文やいとうせいこうなど多くのアーティストがその遺志を引き継いで樹木の伐採中止を提言。また、東京ヤクルトスワローズのファンで知られる作家の村上春樹氏は、ラジオ番組で反対を表明している。
17日〜19日にかけて、ごく近隣の住民を招いた説明会が開かれているが、近接する小学校や保育園、幼稚園など、外苑を学習や遊びの場としてきた子供たちや保護者も説明の対象から外され、不満の声が高まる。
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■100年守り継がれた緑地
記者もこのエリアから徒歩圏に居住しているが、地元でこの計画に賛成する声は寡聞にして耳にしたことがない。
著名人が続々と反対の声を挙げたことで予定になかった追加説明会に追い込まれた開発サイドだが、それによって全国区のニュースとして報じられることに。
大正時代、崩御した明治天皇を記念するために全国の青年団が勤労奉仕として工事に加わり、戦後は東京都が風致地区に指定することによって、100年を超え、人々の思いと叡智によって守り継いできた都心の緑。
世間はこの再開発問題について、どのように受け止めているのだろうか。
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■「開発進めるべき」は1割
Sirabee編集部が、6月30日〜7月2日にかけて、全国10〜60代男女1,000名を対象に「神宮外苑の再開発」について意識調査したところ、最も多かった答えは「地域住民を含めて慎重に議論すべき」でじつに70.7%。
「計画を白紙撤回すべき」が17.4%で続き、「このまま開発を進めるべき」はわずか11.9%にとどまった。じつに約9割が、今の形で工事を続行することには否定的な印象を抱いていることがわかる。
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■中高年は「白紙撤回派」も多く
なお、今回の調査結果を世代別で見ると、とくに50代以降では「白紙撤回すべき」が2割を超え、60代では3割に迫っている。先人が守ってきた都心部における緑地の大切さを、上の世代ほど痛感しているのかもしれない。
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■地元有志は「未来に何を残すか」
近隣の小学校に子供が通う保護者で、明治神宮外苑を子供たちの未来につなぐ有志の会の代表を務める加藤なぎささんは、「多くの方が心配している樹木の伐採だけでなく、さまざまな角度と視点で見通す必要があると思います」と語る。
「先人たちが約束した創建の理念、森を失うことによる生態系の喪失、都市の気温上昇、建物の建替えによる大量の資材廃棄と新しい素材の消耗、ビルの増加によるエアコンなどのCO2排出増加、縦に高い建築物に頼る経済成長の限界、競技スポーツとしてのあり方、誰もが隔たりなく気ままに過ごせる都市の自然の貴重さ、何より子供たちが親しむスポーツの場がなくなること。この多様さこそ明治神宮外苑の真の価値だと考えています」と加藤さん。
「都市計画公園におけるまちづくりは、その土地の価値や性質を正確に捉えてこそ、未来につなげる計画になるのではないでしょうか。再開発を考えることは、今の大人たちが、子供たちの未来とその先に何を残すべきかを考えることだと感じています。必要な開発なら理解と共感をしたいと思っています。そのためにも、ぜひ多くの方の話に耳を傾け、計画に組み込んでいただきたいと思います」と思いを述べた。
■執筆者紹介
タカハシマコト:ニュースサイトSirabee編集主幹/クリエイティブディレクター
1975年東京生まれ。1997年一橋大学社会学部を卒業。2014年NEWSYを設立し、代表取締役に就任。東京コピーライターズクラブ(TCC)会員。カンヌライオンズシルバー、TCC審査委員長賞、ACCシルバーなどの広告賞を受賞。
著書に、『ツッコミュニケーション』(アスキー新書)『その日本語、お粗末ですよ』(宝島社)
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(取材・文/Sirabee 編集部・タカハシマコト)
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