【蔵元コラム】 東日本大震災から4年 東北の日本酒蔵元が酒造りを再開できた理由とは?
みなさんこんにちは。萩野酒造8代目蔵元の佐藤曜平です。
東日本大震災から、今日でちょうど4年。今回は、萩野酒造も所属する宮城県酒造組合、技術担当参事の伊藤謙治氏のコラムを引用させていただきます。
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~「語り継ぐ使命」~
間もなく3月11日、東日本大震災から4年が経とうとしています。
あの時、宮城県酒造組合を構成する25社の26清酒製造場においても大なり小なり被害があり、震災直後の時点では三分の一程の蔵元が廃業を口にするほどに深刻な状況にありました。
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【大津波の直撃を受けた宮城県名取市の佐々木酒造店】
その後、官民、県内外、業界内外を問わずに、多くの皆様から物心両面さまざまな形でご支援やご協力をいただいた結果、宮城県内の全酒造場において酒造りを再開させることができました。
ご支援、ご協力をいただきました皆様に、この場をお借りいたしまして改めまして心より御礼申し上げます。ありがとうございました。
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【賑やかだった名取市閖上の町は壊滅しました】
さて、今回は業界内からの支援事例についてご紹介させていただきたいと思います。3月11日以降、ガソリンが手に入らず、しばらくは電話やメールで各製造場の被災状況を確認していました。3月下旬にようやくガソリンが手に入るようになってから各酒造場を廻り始めました。
各酒造場の声を聞いていく中で、津波浸水被害のあった酒造場において海水に浸かったポンプやモーターなどの電動機器類が壊れてしまい、修理も代用品購入もままならず、復旧作業に支障を来たしているという事実に直面いたしました。
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【最大震度7の強烈な揺れに見舞われた、宮城県栗原市の萩野酒造】
そこで宮城県産業技術総合センターの橋本建哉氏と共に、「倉庫の片隅に眠っているような中古のポンプ等を格安で譲っていただけませんでしょうか?」と、全国の技術者仲間に呼び掛けてみることを思い立ちました。
但し、この場合の支援対象が沿岸部の3酒造場に限定されていた事から、私たち二人の個人的な支援活動と位置付けて行動することといたしました。
また、震災が全国広域に亘っていた事、更にその頃になると復興支援を騙った震災関連詐欺も出始めていた事から、地域を限定した上で私たち二人と親交がある方に支援の呼び掛けをお願いすることといたしました。
これに対しまして、兵庫県1社、鹿児島県4社から支援の申し出をいただきました。
・櫻正宗株式会社様(日本酒「櫻正宗」醸造元、兵庫県)
・小正醸造株式会社様(本格いも焼酎「さつま小鶴」醸造元、鹿児島県)
・若潮酒造株式会社様(本格いも焼酎「さつま若潮」醸造元、鹿児島県)
・有限会社森伊蔵酒造様(本格いも焼酎「森伊蔵」醸造元、鹿児島県)
・白玉醸造合名会社様(本格いも焼酎「魔王」醸造元)
最終的には5社合わせまして醸造機械20点と4トントラック1台を全て無償でご提供いただきました。正直なところ、当初の目論見としては掘り出し物の中古ポンプ1台でも格安で入手できれば御の字だと思っておりました。
ところが、各社様とも提供機材をピカピカに磨き上げ、手書きのマニュアルを添えて、支援先までの運賃もご負担いただきました。(醸造機械類は大きくて重く、運賃だけでもかなりの金額になります)
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【支援を受け、仮設蔵にて酒造りを再開した佐々木酒造店】
支援を受け、仮設蔵にて酒造りを再開した佐々木酒造店。そして、皆様から地域文化の為、日本の酒造り文化の為にも再起を願っているとの励ましをお寄せいただきました。あの時に感じた温かさと力強さを忘れることはできません。
とりわけ、真っ先にお申し出をいただきました櫻正宗株式会社様におかれましては阪神大震災の折に倒壊した酒蔵から回収し、緊急用に大切に保管してあった酒造機器の数々をご提供いただきました。
このことをきっかけとして復旧に止まらず、より良く生まれ変わる為のチャンスだと捉えられるようにもなりました。
今回ご紹介させていただきました事例以外にも多くの皆様のご支援、ご協力を得て、宮城県においては1社も欠けることなく酒造りを再開することができました。ご恩返しも十分にはできておらず、居た堪れないような気持ちになる時もあります。
一方で、私たちはこの震災から得た教訓や反省を語り継いでいくことによって、他の地域や次世代において防災や減災への礎としていただくことこそが、私たちに課せられた使命であり、唯一私たちにも出来得るご恩返しではないかと思ってもおります。
引用元:宮城県酒造組合 伊藤謙治 Facebook宮城の酒ページ 2月25日掲載分より
(文・写真/萩野酒造・佐藤曜平)