離島への冒険旅行の数々③〜やっぱり石垣島・後編〜【溜池ゴロー、子育てこそ男の生き甲斐】
ワシらにとって初めての石垣島旅行からの帰京予定日、超大型台風が石垣島を直撃した。ホテルの窓から見る風景は、今まで一度も見たことのないような、まさに「荒れ狂った」ものだった。ワシはその光景を家族と一緒に見ながら、内心こう思っていた……。
「今までのワシの経験した台風というのは、本物の台風ではなかったのだ!これぞ台風!さすがに凄いぞ石垣島!」……と。
■最大瞬間風速70mの巨大台風に「自然の驚異」を学ぶ
テレビから流れる台風情報では、「最大瞬間風速70m」と伝えられていたのだが、ワシにとって「最大瞬間風速」というものの感覚が全く分からなかった。しかし、後で聞いたところによると、それくらいの大きさの台風は石垣島でも30年ぶりくらいだと教えられた。
なんとまあ、神様はワシら家族に粋な計らいをしてくれたものだ。初めての石垣島で、こんな大きな台風を見せてくれる機会を与えてくれるとは。見たくとも偶然遭遇しないかぎりは経験できないのだから。
ワシは「そうなのだ!こんな凄い自然の驚異を目の当たりにできる機会はめったにないのだから、息子にもしっかりとこの光景を見せておこう!」と思った。
窓外の光景を見つめる息子の表情には、凄いものを見ている驚きの色と、自然に対しての畏怖が入り交じっているようなものだった。
きっと、「幼い息子の脳みそは、人間などちっぽけなものだと感じさせるこの自然の偉大さを見ながら、とても良い刺激を受けているだろう」という思いでワシは内心ほくそ笑んでいた……のだが……ん???
本来なら息子にこれだけの刺激を与えることができて嬉しいはずなのに、なぜだか、ワシの心の片隅に何かひっかかりを感じてしまう……なぜだ?……その瞬間、あることを思い出した。
「そうだ!明日は東京で撮影ではないか!」
今日帰れなければ、当然明日の撮影にワシは行けないわけである。一瞬頭の中が大型台風のように荒れ狂ってしまいそうになったが、ワシは冷静になって考えようと努めた……。
「飛行機は飛ぶわけないよな」と思いながらも、一応石垣空港に電話をかけてみたら、飛ぶどころか空港が閉鎖されてしまっている始末である。
もちろん、その日は全ての便が欠航だ。じゃあ、次はいつの便に乗れるのだろう?……そこからのワシは航空会社とワシの制作スタッフへの電話で大わらわだった。
結局、ワシの東京での撮影は別監督にお願いすることでまとまったのだが、肝心の帰りの便は2日後まで空きの席がなかった。つまり、そこから2日間余分に石垣島で過ごすことになった。
ホテルは台風で停電しており、いつ復旧するかのメドも立たず、たとえ台風が明日までに去ったとしても波が高く海では泳げないらしく、船は出ないだろうから他の離島への観光もできないらしい。
ワシらは、停電で電気のつかない室内プールや、運送業者も食材を運ぶことができない影響で、メニューがとても少ないレストランで、荒れ狂う外の風景を見ながら過ごしたのだが、やはり人間というのは、そんな凄い風を見ていると、一度体感したいと思うものだ。
ホテルの扉は全てシャットアウトされていたが、正面玄関だけが出入りできる状態だった。ワシは、最大瞬間風速70mの風を一度体感しようと、こっそり外に出ようとしたら、ホテルの係員さんに止められ怒られてしまった(笑)
それくらいの風だと、もし小さな小石が飛んできて頭に当たったら、十分に即死の可能性もあるらしい……いや〜危ない危ないと思っていたら、正面玄関の反対側の口でも、ホテルのボーイさんに怒られている観光客のオヤジがいた。やはり、人間だれでも同じようなことを考えるものだ。
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■巨大台風が息子に与えた衝撃
翌日の朝、どうやら台風はやっと去っていったらしく、外出できる状態にはなっていた。ワシら家族も外に出て散歩をしてみたが……台風が過ぎ去った後は、見るも無惨な光景だった。
ホテル内の多くの木々はただ「折れている」という状態ではなく、根っこからぼっこりと掘り起こされたように「引っこ抜かれた」状態だった。そして、木々だけではなく、案内板など、コンクリートの固まりを土の中に埋めたようなものまでもが根こそぎ「引っこ抜かれた」ような状態であった。
聞くところによると、その辺りの広めの駐車場では、何台もの車がひっくり返っていたそうだ……んん、恐るべし「最大瞬間風速70m」台風。さすが石垣島である。
息子はまだ2歳だったが、この台風のときの光景は、10歳になった今でも全て覚えていると言っていた。よっぽど息子にとっても自然の凄さを思い知るような強烈な経験になったと思う。
そんな経験をワシら家族に与えてくれた天にワシは感謝している。天(でも神様でもいいのだが)がワシの息子にこの自然の驚異を今のうちに見せてくれようとしたのだろうと、ワシは解釈している。まあ、勝手な解釈に聞こえるかもしれんが、これでいいのだ。
そして、ワシら家族は、この石垣島旅行がキッカケとなり、翌年から毎年、石垣島とその周辺の離島を巡る旅をすることになった。
この旅の後、息子が3歳になり、年があけてゴールデンウイークの時期に、今度は石垣島だけでなく、いくつかの離島にも泊まることにした……のだが、それはそれで、またいろいろな波乱が待ち受けていたのだった。
てなわけで、続きは次回!
(文/溜池ゴロー)