R‐1準優勝の謎の芸人…デビューのきっかけはiPhone? 本気にさせた亡き母の存在
こんにちは。双子でタレント活動をしています、奈津子と亜希子です。
こちらの独特な風貌の男性は、今年、“ひとり芸”ナンバーワンを争う大会「R‐1ぐらんぷり2015」で敗者復活戦から勝ち上がり、準優勝をはたしたお笑い芸人・マツモトクラブさん、38歳です。
準優勝した日、Twitterの急上昇ワードに現れたマツモトさんの名前。
ところが、いくら検索しても芸人としての目立った経歴は見当たらず、事務所のサイトに記載されていたのは「趣味がパチンコ」という情報や、自身で投稿していたネタの動画などがほとんど。
ネット上では、謎が多いことでも話題になっていました。それもそのはず、21歳の頃から劇団に所属し、約13年間舞台俳優として活動していたので、芸人さんとしての経歴はまだまだ短いんですね。
俳優時代は百万単位の借金を抱えていたというマツモトさん…。どのような過程を経て現在の芸人「マツモトクラブ」になったのか、インタビューしてみました。
メディア系の専門学校に在籍し、当初は裏方を志望していたというマツモトさん。しかし、徐々に表舞台への憧れが強まっていきます。
卒業後、友人から紹介された劇団に「月謝が安いから」という理由で入団したそうです。
― 当時の生活は苦しかったですか?
「舞台の本番中はアルバイトもできないですし、生活はかなり困窮していました。
俳優として大きな舞台に立たせていただき貴重な経験を沢山しましたが、段々とセリフ覚えをしている時にも生活費のことを考えてしまうようになって…。
借金もかなりしていたので、一旦きちんと返さなければと思い、劇団をやめる決心をしました」
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■iPhoneへの機種変が芸人になったきっかけ!
― それで一旦、舞台俳優の仕事から離れたんですか?
「はい。33歳の時に約1年間、普通の仕事だけしてました。昼はコールセンター、夜は居酒屋のバイトを掛け持ちして月20万円弱を稼ぎ、少しずつ借金を返していきました。
ようやく目途が立ったとき、たまたま携帯をiPhoneにしたんです。そうしたら沢山の機能に驚きました。
『これは何かに使える!』と思い、ボイスメモやカメラの動画機能を使って、ひとり芝居のようなネタを自分でYouTubeにアップするようになったんです。
でもその時は、まだ芸人に転身しようとかは考えてませんでした」
動画は、録音した自らの声に合わせてコントするというスタイル。それが少しずつ一部のユーザーの支持を得ていきます。
― 朝から晩まで働く日々で、動画を投稿することがある種の気分転換にもなられていたんですね。
「そうですね。ある日、役者時代の後輩がたまたまその動画を見つけて、『先輩が入れそうな事務所知ってますよ』って教えてくれたんです。
いまの事務所のお笑い部門です。それをきっかけに、役者ではなく芸人を本格的にやってみようと思ったのが、おととしのことですね」
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■転機となった「母の死」
「昨年のR−1では3回戦で敗退してしまい、さらにその時期、母が病気でもう長くないことが分かりました。
なんとか親孝行したいと思ったけど間に合わなくて…今までのことを凄く悔やみました。
いちばん大切な人を失う出来事を経験してから、自分の中のスイッチが明らかに“オン”になりました。おかげで翌年のR‐1では、決勝に進出することができたんだと思ってます」
― 結果、見事準優勝を勝ち取ったわけですが、周囲からの反響はありましたか?
「R‐1放送直後からたったの1時間で、ツイッターのフォロワー数が600人から一気に3000人に上がりました。
テレビの力って凄いですね…これまででは考えられないようなテレビ出演もさせてもらってますが、まだまだこれからという感じで、変わらずアルバイトしています」
― 芸人さんへ転身して、最も変わった点はなんでしょうか?
「自分のキャラクターって無理して作らなくていいんだな、と苦しまなくなった点です。
前に出られるタイプでもないし、いわゆる“芸人的主張”があるわけではないけれど、それを少しずつ評価してもらっていて、この年齢になって人生でいちばんワクワクしてます。
“ネタ見せ”でも、はじめたばかりの頃はアドバイスを鵜呑みにするばかりでしたが、最近は自分の感覚を信じる芯のようなものも芽生えてきました」
最後にマツモトさんは、こう話していました。
「人間、別に頑張らなくてもいいんだと思うんです。頑張りたいというのは自分が頑張りたいから頑張るのであって、そうじゃなくてもいい。
煮詰まっている仕事をやめてみて、別の職業についたとしても、そのうちにやるべき環境になっている気がします」
(文/奈津子・亜希子)