米国の大学のカーストを最も的確に描く映画?『モンスターズ・ユニバーシティ』
※画像はYouTube「モンスターズ・ユニバーシティ 本編プレビュー映像」のスクリーンショットです
自由でフレンドリーなイメージのあるアメリカでの大学生活。しかし、思いのほか厳しい“スクールカースト”が存在します。
アメリカの大学への留学経験がある日本人の声を集めてみると、その実情を最も上手く描いているとされるのは、意外にも『モンスターズ・ユニバーシティ』でした。
■『モンスターズ・ユニバーシティ』にみるアメリカの大学
『モンスターズ・ユニバーシティ』は、ピクサー映画『モンスターズ・インク』の続編として2013年に公開され、日本でも人気を博した作品です。
『モンスターズ・インク』の主人公であるサリーとその親友マイクの大学時代の“馴れ初め”を描いたこの映画。注目したいポイントは、主人公たちが所属し仲を深めるきっかけとなった、「OK」(ウーズマ・カッパ)という学生グループにあります。
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■フラタニティーとソロリティー
この「OK」は、アメリカの大学に存在する“社交クラブ”のひとつです。男子だけの社交クラブをFraternity(フラタニティー)、女子だけのものをSorority(ソロリティー)と呼びます。
主人公たちが所属した「OK」も、作品のなかでイチバンのライバルチームとなる「RΩR」(ロアー・オメガ・ロアー)も、フラタニティーにあたります。
クラブ活動のようなものですが、フラタニティーのメンバーはお互いを「brother(ブラザー)」と呼びあい、“第2の家族”ともいえるほどの強い絆で結ばれます。また、正式なメンバーになるのは難しく、所属していることが一種の「ステータス」となる場合もあります。
その“ステータス”のわかりやすい象徴は、正規メンバーだけが持つお揃いのユニフォーム。ほとんどのメンバーが授業中など普段から着用しています。
しかし、フラタニティーに所属することだけが勝ち組というわけではありません。さらに厳しいヒエラルキーが、グループ間に存在するのです。そのわかりやすい例が、映画にも登場しています。
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■「家」という象徴
それは、彼らが住む「家」です。この家は「フラタニティーハウス」と呼ばれ、フラタニティーの多くは彼ら専用の家をグループごとに持ち、共同生活をおくっています。
ライバルチームである「RΩR」は、いわゆるスクールカースト最上位の“イケている男”しか入れないフラタニティー。そんな彼らは、おしゃれでキレイな家に住んでいます。
ちなみに、「RΩR」のリーダーの体格はアメフト体型。アメリカでは、アメリカンフットボールで活躍している学生がスクールカーストの最上位にいがち、というステレオタイプな“あるある”を反映した演出でしょう。
※画像はYouTube「モンスターズ・ユニバーシティ 本編プレビュー映像」のスクリーンショットです
一方で、主人公のマイクとサリーが所属する「OK」は、いわゆる「落ちこぼれ」の集まりと映画のなかでも描かれており、住んでいる家は“しょぼめ”です。
なお、1978年のアメリカ映画『アニマル・ハウス』でもフラタニティーのヒエラルキーが取り上げられており、この作品でも同じように、ヒエラルキーの差が「家」に表れています。
『モンスターズ・ユニバーシティ』は、言わずもがな、アニメ作品。多少誇張されている部分があるのはもちろんですが、アニメという形でより個々のキャラクターや世界観を視覚的に際立たせることで、複雑な“スクールカースト”をわかりやすく描けているのかもしれません。
(文/しらべぇ編集部・永久眞規)