司会に合わせ交代予定!?『王様のブランチ』における「女の戦い」に注目
1996年に放送開始してから19年半。土曜の昼に放送されている『王様のブランチ』。先日も、5代目女性司会として新川優愛が発表されるなど、まだまだTBS系列の週末の看板番組として頑張っている。
貴重な情報源として見る者、することのない週末をひたすら潰すために見る者、ながら見でほぼ内容を見ていない者。長時間の番組だけに、いろいろな見方をしている人がいるが、個人的には、あの時間帯にはあれくらいのゆるさがちょうどいい。
■絶対的な階級差があるブランチレポーターズ
そんな『王様のブランチ』を、開始当初から華やかに彩ってきたのがブランチレポーターである。過去には坂下千里子、中越典子、水野裕子などを輩出し、現在も、グラビアとデング熱でおなじみの紗綾など13人が、毎週にこやかにレポートをしている。
一見、華やかそうに見える彼女たち。しかし『王様のブランチ』では、レギュラーメンバーとブランチレポーターに絶対的な階級差が存在する。
スタジオで座る位置もレギュラーが前、レポーターは後ろ。VTRのコメントを求められるのも、基本はレギュラー。明らかに、扱いに差がある。
いつか私たちもあの前列のレギュラー席へ、野心を胸に秘めながら、スタジオで笑顔を絶やさないブランチレポーターたち。
しかし、彼女たちの願いが叶うことは、ほぼ無いに等しい。
長い歴史の中で、ブランチレポーターからレギュラーに上り詰めたのは、はしのえみと鈴木あきえのわずか2人しかいないのである。『SASUKE』の完全制覇者が18年で4人だということを考えても異常なほどの狭き門である。
まるで、公務員のノンキャリア組が、いつかキャリア官僚を見返してやる、と思いながら出世の道が絶たれているような構図が、そこにはある。
関連記事:「あの人は今」の進化系としての「有吉反省会」と「しくじり先生」
■姫様役をゲット、はしのえみ
ブランチレポーターといえば、モデルや若手女性タレントのイメージであり、陳腐な言い方だが女子力高めが多数派である。
一方、前述のレギュラー昇格を勝ち取った2人は、決してそういう枠ではないところが面白い。
はしのえみは、番組開始間もない1996年7月からブランチレポーターを務め、2000年に見事にレギュラーに昇格した。鹿児島生まれ、欽ちゃん劇団出身の垢抜けないタレントであった彼女は、初期の吉本多香美や中森友香といったタレント揃いのメンバーの中では明らかに浮いていた。
しかし、生粋の生真面目さ、一生懸命さで徐々に信頼を勝ち取り、長寿コーナー「女王様のお買い物」の姫様役をゲット。以後は、ブランチの顔として約18年にわたり出演しつづけた。
2014年3月に卒業する直前まで、誰も重視していなかった「姫様とはしのえみは別人」という設定を守り通したところに、彼女らしさが表れていたと思う。
関連記事:60歳にして神格化されない「所ジョージ」が辿り着いた境地とは?
■「買い物の達人」で信頼を得た、鈴木あきえ
鈴木あきえは、2007年2月からブランチレポーター。はしのえみとは違い、2013年のレギュラー昇格後も、レポーターを兼務している。
頭の回転が速く、よく笑い、いつも元気。これまでブランチレポーターに、いそうでいなかったタイプの彼女は、今も続くコーナー「買い物の達人」での達者なコーナー司会ぶりで信頼を得た。
ラジオパーソナリティとしても評価が高く、はしのえみが安心して卒業できたのは、彼女が出てきたからとも言えよう。
また、レギュラーにこそなれなかったが、愛コブッシーこと森山愛子も、2005年~2012年の7年にわたり、レポーターを務めた。
演歌歌手という他のレポーターとは全く一線を画すキャリアの彼女も、そのレポート能力の高さとキャラを買われ重宝された。
ちなみに「森山愛子」という芸名はアントニオ猪木命名なのは、皆さんご存知だろうか。
こうして見てわかるように、レギュラーの厚い壁を乗り越えるには、普通のレポーター然としたレポーターでは難しく、ひとつ突き抜けた個性が必要になってくる。ノンキャリアの星の出現を、期待して待ちたい。
関連記事:ファンタジーな画面に似合わぬ本格法廷教育劇 Eテレ「昔話法廷」って?
■10月以後に注目?
ちなみに今回発表された五代目司会新川優愛は21歳。これまでの歴代女性司会と比べると圧倒的に若い。2015年9月現在のブランチレポーター13人のうち、新川より年下なのは何と大沢ひかる1人だけ、あとは全員年上である。
噂では、今回の司会交代に合わせ、レポーターも何人かは交代する予定とのこと。無事に番組に残ったレポーターメンバーとて、若くして抜擢されたキャリア組を前に、心中穏やかではないはず。10月以後の『王様のブランチ』における女の戦い。目が離せない。
(文/前川ヤスタカ)