紳士から武闘派、犬にまで!様々に描かれる愛すべき名探偵ホームズ【芥川奈於の「いまさら文学」】
『シャーロック・ホームズの冒険』(コナン・ドイル)
名探偵ポワロ、ミス・マープル、刑事コロンボなど、世界中で人気の探偵や刑事はたくさんいるが、中でも群を抜いて多様な描かれ方をしているのは、コナン・ドイルが書き上げた名探偵ホームズではないだろうか。
古き良き時代の英国はロンドン。そこに現れるのが、世界で最も有名な探偵・ホームズである。
彼は相棒のワトスン(ワトソン)と共に、様々な難事件を解決していく。ときにスコットランドヤード警察(ロンドン警視庁)のレストレード警部と対峙しながらも、推理力と個性で事件に迫る姿はとても勇敢でありながらどこかスマートで格好良い。
新潮社文庫版の『シャーロック・ホームズの冒険』は、「赤毛組合」「まだらの紐」「唇の捩れた男」など有名な短編が10編収まっており、ホームズ初心者にとってもこの世界に入りやすい1冊となっている。
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そんな魅力的なキャラクターであるホームズは、原作を元にして多くのドラマ、映画などが世界中で制作されている。
記憶に新しいのは、ガイ・リッチー監督の映画『シャーロック・ホームズ』(2009)、続編『シャーロック・ホームズ/シャドウ ゲーム』(2011)ではないだろうか。ロバート・ダウニー・Jr扮する筋肉隆々な探偵ホームズと、ジュード・ロウが演じるクールなナイスガイ、ワトスン博士の組み合わせは斬新で、多くの女性人気も獲得した。
対して、原作にやや忠実なホームズ像を描いたのは、英国のBBCテレビドラマシリーズ『SHERLOCK』(2010~)。セクシー俳優・ベネ様ことベネディクト・カンバーバッチのホームズは、いかにも英国の探偵=「自称・世界でただ一人のコンサルタント探偵」、といった風情。
特筆すべきは、ホームズと同居しているジョン(ワトソン)とのやりとりだ。シリーズが進むにつれ、二人の関係に少しずつ変化が起こる。また、モダンなホームズの衣装も注目点のひとつである。
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さて、その前にもテレビドラマシリーズは作られている。英国グラナダテレビ製作の『シャーロックホームズの冒険』(1984~1994)だ。
このホームズの相棒ワトソンは、オーソドックスな賑わし屋とされるキャラクターを捨てて、信頼できる真の英国紳士として描かれている。ストーリーや時代背景は原作に忠実で、期待を裏切ることはない。
変わり種では、日本の東京ムービー新社とイタリアの国営放送局の合作『名探偵ホームズ』。日本では1984年から1985年にわたり放送され、うち6編を宮崎駿氏が監督・脚本・演出などをしていることでも話題になった。
主人公ホームズをはじめ全てのキャラクターが「犬」であることや、宮崎作品でおきまりの機械、飛行機、車などのデザインも面白い。内容はやや子供向けで、常に対モリアーティ教授のドタバタ劇風が多い。
また、バリー・レヴィンソン監督の映画『ヤングシャーロック ピラミッドの謎』(1985)は、天才的な推理力を持つ「少年」ホームズが、「同級生」のワトソンと共に、1870年のロンドンで起きた事件を発端に様々な謎を追いかけていくストーリー。こちらも併せて観ていると面白いかもしれない。
このように、唯一人の「名探偵」を題材に様々な作品が派生し、現代まで多くの人々を魅了していくことは大変素晴らしい。今後もどんなホームズやワトソンが登場するのか、見守っていきたい気がする。
(文/芥川 奈於)