精神疾患の労災認定、過去最多!認定されたらどうなる?
ひと昔前なら「精神の病気? そりゃ甘えだろ」と非難されていた精神疾患の労災問題。現在でも偏見が残る中、労災の請求と認定件数が過去最多となっている。申請から認定までの動きについて当事者や弁護士に話を聞いた。
■精神障害の労災請求件数は1456件
厚生労働省によると、2014年の精神障害の労災請求件数は1456件。そのうち支給決定件数が497件だった。
わずか3割強だが、労災問題を専門にする弁護士は「昔に比べればかなり認定のハードルが下がった」という。背景には長時間労働などを強いるブラック企業が社会問題化した部分が大きいと指摘する。
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■認定の主な基準は長時間労働
労災といっても、骨折などの外傷と異なりなかなか判別がつかないため認定は面談と証拠が鍵となる。認定基準については厚生労働省は
①認定基準の対象となる精神障害を発生していること
②認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
③業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと
としている。
先の弁護士は「認定の基準は長時間労働が中心になっている」と指摘する。長時間労働の目安のひとつが残業100時間ほど。逆に、パワハラなどによりメンタルを壊しても、長時間労働がなければ認定されない可能性がある。
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■申請から認定までの大まかな流れ
労災を申請すると、労働基準監督所で労災申請の書類が渡される。会社が記入する部分もあるが、自らの落ち度を認めないため基本は協力してくれないことが多いようだ。その場合、会社が記入する部分に「会社証明拒否」と書く。
そして、書類提出からおよそ6カ月審査が行われる。聴取と証拠を基に判断するので、メモでも何でもいいので長時間労働の証拠を提出すること。
この他、聴取した内容とすり合わせるために職場の同僚らにも聴取が行われる。日頃から関係を構築しておかないと虚偽の説明や聴取に応じてくれないケースもあるようなので、注意すべきだろう。
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■保険料の還付金請求、100万円超も
無事に労災認定を受けたからといって喜んでばかりもいられない。発病してから認定されるまでの間に、保険を使って治療していた保険料を還付しなければならないのだ。これは、労災認定された病気は保険が適用されないためである。
仮に長期通院していた場合、100万円を超える金額を支払わないといけない。一方で、労基署を通じ返金されるが3カ月ほど待つことになる。労災申請する前に金を貯めておこう。
同様に、認定を受ければ退職しても休業補償で年収の8割弱を受け取るので退職後に心身の回復を図れるものの、認定されなければ社内は針のむしろ状態になる、という可能性もある。
そうなると、余計にメンタルが悪化する恐れがあるので、弁護士など専門家のアドバイスを受け申請するかどうか、検討する必要が出てくるだろう。
(取材・文/しらべぇ編集部・伊藤憲二)