冬が来ると見たくなる…切なさに溢れた傑作アニメ【松澤千晶のアニメめくるめく世界】
『ホワイトアルバム2』とは
こんにちは、フリーアナウンサーの松澤千晶です。秋も深まってきた今日この頃、次第に冷え込む日も多くなり、最近ではちらほらと冬の足音も聞こえてくるようですね。
遅ればせながらいつものご挨拶をすると、私はアニメを見る事が大好きなのですが、冬と言えば、このアニメです。
そう、『ホワイトアルバム2』です。
■『ホワイトアルバム2』とは
元々は18禁恋愛アドベンチャーゲームで、今回ご紹介するのは、こちらのアニメ化作品です。
何故いきなり2から…と思われる方も多いと思いますが、1と直接的なつながりは無く、世界観だけが引き継がれた10年後を舞台にしたもので、登場人物も異なるので初見でも全く問題ありません。と言いますか、私自身がシリーズ1も原作のゲームも全く知らずにこのアニメに触れまして…もう、これまでにない切なさに心を掻き乱されてしまいました。まずね、キャッチコピーが「冬が来る…」から始まるのですよ…ああ、胸が締め付けられるようです。
物語は、主人公・北原春希が軽い気持ちで高校の軽音楽同好会に入るところから始まります。そしてバンドメンバーとなる2人のヒロイン、小木曽雪菜と冬馬かずさに出会うのですが、この二人の春希を巡る関係が、ただの三角関係とは割り切れず、見ていて胸が苦しくなってしまうのです。
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■問題の無い2人のヒロインと無自覚な主人公
まず1人目のヒロイン・雪菜は学校のアイドル的な存在で、ボーカルとしてバンドメンバーに加わり、主人公・春希と心を通い合わせるようになります。そしてもう1人のヒロイン・かずさは天才的なピアノの腕前でクラスでは少し浮いた存在でしたが、キーボードとしてバンドメンバーに加わり、春希、そして雪菜と心を通い合わせるように…。
皆さん、もうおわかりですよね。そう、ストーリーは至って単純。主人公の、バンドやろうぜ!みたいなノリで始まったはずなのに、いつの間にか芽生えてしまった「何か」がこの二人のヒロインを苦しめるのです。(しかし何故バンドメンバーに女子二人を選んでしまったのか…そこは突っ込んではいけないところではありますが。)
この物語の凄いところは、誰も悪者がいないところ。確かに主人公の優柔不断さは如何なものかと思いますが、この2人のヒロインを目の前にしたら仕方の無い事かもしれません…だって、どちらも放っておけないのですから。
そして何より素晴らしいのが、2人のヒロイン、雪菜とかずさの友情がきちんと成り立っているところ。劣等感はありつつもお互い尊敬し合っているので、騙し合ったりなんて出来ず、ひたすら自分の気持ちをどうしたら良いのか苦しんでいるのです。
そんな三人の中で芽生えた、思春期ならではの友情とも愛情とも割り切れない絆…3人でいたいけれど、3人のままではいられない。壊したくないけれど、このままでは成り立たないという絶妙な関係なのです。
物語中盤、3人で温泉旅行をするというあり得ない展開にもなりますが、この3人ならあるのかな?と妙に納得してしまうくらいです。
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■切なさはいつもアダルトの中に
アダルトゲームと言ってもただのエッチなゲームではありません。もちろんそういった要素もありますが、男女間の恋愛関係、そして肉体関係が生じてしまうからこその、何とも言えない愛おしさと狂おしさがあるのです。
それは、ただ純粋に誰かを好きだった子供の頃には感じた事がなかった、少しずつ大人=アダルトに成るにつれて育ってゆく感情…そう、それが「切なさ」なのではないでしょうか。
ただ人を好きになるだけで、こんなにもドラマが生まれるのだと、それはいつの時代も、どの次元でも変わらない普遍的なものなのだと感じました。
降り積もる雪が、まるでその想いのように苦しくなる『ホワイトアルバム2』、この冬一番の切なさを感じたい方は是非ご覧下さい。
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(文/フリーアナウンサー・松澤千晶)
(文/しらべぇ編集部・Sirabee編集部)