【本物】ヤクザは拳銃を持たない?実態に迫る映画が公開中
暴力団対策法が布かれ20年、ピーク時には18万人にものぼったと言われるヤクザは、ここ数年で6万人を割った。そんな斜陽の一途をたどっているように見えるヤクザは、今、いったい何を考え、どのように暮らしているのだろうか?
昨年、東海テレビでドキュメンタリー番組として放送された『ヤクザと憲法』が劇場版に再編集され、現在映画館で上映されている。
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■実録ではなく「本物」
大阪府堺市のとある住宅街。その一角にたたずむ一見なんの変哲もない建物。しかし、よく見ると何台もの防犯カメラが設置され、物々しさを醸し出している。 ここは指定暴力団のひとつ、「二代目東組二代目清勇会」の事務所だ。
重厚な鉄の扉を開けて取材クルーが入る。 取材の取り決めは、以下の3つ。
①取材謝礼金は支払わない
②収録テープ等を事前に見せない
③モザイクは原則かけない
そうして密着すること約100日。カメラはヤクザのリアルな実態を浮き彫りにしていく…。
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■ヤクザは拳銃を持ってない?
事務所内はいつも、誰かのふかすタバコの煙でいぶされている。金勘定をする男に、クルーはこうたずねる。
クルー「なんのお金ですか?」
男「シノギですわ。高校野球の…」
出所したばかりだという「部屋住み」の男が、事務所の中を案内する。寝室には怪しげな形状の長細い大きなビニールバック。部屋住みの男は、知人にもらったテントだと言う。そこで、監督が質問する。
監督「マシンガンとかじゃないんですか?」
男「そんなわけないじゃないですか!」
監督は、さらに斬りこんだ質問をしていく。
監督「拳銃はないんですか?」
男「あるわけないじゃないですか」
監督「じゃあ他の組が攻めてきたらどうするんですか?」
こうした茶番とも言える質問に逆ギレされやしないかと、見ているこっちが冷や冷やしてしまうのである。
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■二代目組長へのインタビュー
カメラは、二代目清勇会会長・川口秀和へも肉薄する。彼は1985年に起きたヤクザの抗争事件で、15年の実刑判決を受けた。巻き込まれた一般人の女性が死亡したこの事件は、暴力団対策法のきっかけを作ったといわれている。
夜のネオン街を一人練り歩く会長が、馴染みの小さな居酒屋に立ち寄る。彼がヤクザの親分であることを知っているという居酒屋の女将に、監督が質問した。
監督「怖くないんですか?」
しゃがれた声の彼女は一笑し、こう答えたのだ。
女将「ヤクザが怖かったら新世界で生きていかれへんで。この人らは守ってくれる。警察は何にも守ってくれへん」
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■強いのは権力か? アウトローか?
詐欺未遂のかどで組員が捕まり、清勇会事務所にガサ入れが入る。刑事たちは法の番人たる出で立ちで、こざっぱりとしたスーツに身を包んでいる。
しかし、ヤクザ相手にならばいざ知らず「カメラ止めろ!」と取材クルーをどやしつける姿に、「正義の味方」たる面影をみるのは難しい。
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■はたして彼らに人権主張の資格はあるのか?
銀行口座がつくれない。子供が幼稚園に通えない。保険に入るために提出する書類には「暴力団関係者ではない」ことを申告する欄が設けられ、もし嘘の記入をすれば、詐欺罪で逮捕されてしまう…。
暴力団排除のために、司法が社会に仕掛ける罠は巧みだ。 本作は、ヤクザは割に合わない、まさに因果な稼業であることを十分に見せつける。
終盤、監督は川口会長に切り出す。
会長「ヤクザをやめればいいっていう人もいると思うんですけど…」
その言葉に対する川口会長の返答に、そこはかとない悲壮感が漂うのだ。
現在を生きるリアルなヤクザの姿を記録した貴重な本作。その映像を是非劇場で確かめてほしい。現在はポレポレ東中野などで上映中。全国でも、順次公開の予定である。
参考リンク:『ヤクザと憲法』公式サイト
(文/しらべぇ編集部・フクダかづこ)