【実食レポート】アジア全体で消え行く中で、ベトナム・ハノイに残る犬食文化
ベトナム料理、と聞いて何を思い浮かべるだろう。茹でたエビや生野菜を包んだ生春巻き。もっともポビュラーで米麺を使用したフォー。屋台などでよく売られているベトナム風サンドウィッチのバインミー、などなど。ギトギトした感じはなく、あっさりとしてクセのないイメージがあるのではないだろうか。
ところが、ベトナムのそういったイメージをぶち壊す、とある食材がハノイの一角に並んでいたのだ。
ハノイはベトナムの首都で、ホーチミンに次ぐ第二の都市。ホーチミンのような喧噪はなく静かで、フランス・コロニアル調の建物や、旧市街は中国風の街並みがあったりと、不思議で独特な魅力がある街だ。そのハノイの一角で見つけた驚愕の食材とは、“犬”である。
すっかり毛がはがされ、丸焼きになっているので犬種までは分からないが、犬であろうことは理解できる。
ハノイは中国の影響を受け中国南部と似た犬食文化が根付いているのだという。犬料理はベトナム語で「thịt chó(ティッチョー)」と発音する。確かにこの店の看板にも同様の文字が記載されていた。
犬をペットとして飼っている人が多い日本人にとって、食するのはかなりの抵抗があるだろう。
だが私は犬を飼ったことがない身であるが故、食することにさほど抵抗はない。そこで犬を食べてみることにした。ベトナム語を一切話せない私はどのように注文していいか分からず、店頭に並んでいる犬肉に指をさして注文。
ここまでの姿になっていると、可哀想というよりせっかくだから食べてあげなければ供養されないんじゃないか、とさえ思えてくる。
ビールを飲みながら待つこと数分。供された犬料理は、ぶつ切りにされていて言われなければ犬だと判明できないようになっていた。
グロテスク感は一切なくなったが、犬料理であることには変わらない。脂身が乗っている欠片を箸で持ち上げ、塩をつけて頬張った。
意外とジューシーで、思っていたほど臭みはない。もっとも近いイメージは豚肉だろうか。食べる前の期待感が皆無だっただけに、ビールのお供として箸が進む。
ところが、同じ皿に乗っていたソーセージはヤバかった。
これは獣臭かった。一口食べただけでご馳走さま。何が詰められているのか判明できないが、内蔵系なのだろう。
アジアで今でも犬食文化が残っているのはベトナムの他、中国、韓国ぐらいだと言われている。台湾にも以前はあったが2001年に犬や猫を食用目的で食肉解体することを禁じる法律が制定。タイでもなくなりつつある。
消えゆく犬食文化。ハノイの街角で調理した犬を売っている店も、いつかは無くなってしまうのだろうか…。
(取材・文/しらべぇ海外支部・西尾康晴)