インドネシアのショッピングモールが「天下一武道会」状態
ASEAN最大の人口と経済規模を誇るインドネシア。初めてこの国を訪れた日本人が異口同音に口にするのは、「とにかく景気がいい」ということだ。
インドネシアは近年、景気が後退していると言われているが、それでも都市部市民の購買力は非常に盛況。世界のエコノミストも注目する。
そしてその活発さは、この国のスポーツ界にも当然波及している。最近ではインドネシアでも総合格闘技が盛んになってきていて、ジャカルタやスラバヤといった大都市では新しいジムが次々にオープンしている。
そしてそこで鍛錬を重ねた選手たちは、驚くなかれ、ショッピングモールで試合を行なうのだ。
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■吹き抜け構造のショッピングモール
本題の前に、インドネシアのショッピングモールの構造について説明しよう。
この国の商業施設は、例外もあるが基本は吹き抜け構造である。すなわち1階フロアから天井までの巨大な空間があり、上階へは螺旋配置のエスカレーターで上るというもの。
そして吹き抜けの最下部である1階の空間では、いつも何かしらのイベントが行われている。一番ポピュラーなイベントは高級車の即売会だ。インドネシアのショッピングモールの利用者は、大半がアッパーミドル層以上の市民である。
そして、格闘技の試合も、そこで行われる。
■日本人選手も大活躍!
ジャカルタで毎年11月に開催される『インドネシア・サブミッションチャンピオンシップ』は、この国の寝技競技最高峰の大会だ。
場所は南ジャカルタの大型商業施設『チランダック・タウンスクエア』である。ちなみにこのショッピングモールは2014年に『天丼てんや』のインドネシア第1号店が置かれるなど、日系飲食企業にも馴染み深い場所だ。
この大会の試合は「グラップリングルール」で進められる。打撃は一切禁止、寝技だけで決着をつけるものだ。
男子5階級と無差別級、そして女子無差別級の熱い試合が、チランダック・タウンスクエアの1階フロアで繰り広げられる。
じつはこの大会には、日本人選手も出場し実績を上げている。その中のひとり、シンガポール在住の垣田真矢選手は昨年、定量級で優勝した。その上無差別級でも入賞し、最多一本勝利賞などのサブタイトルも丸々手にしたのである。
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■タバコを売るコンパニオン
そうした諸々の賞には、ちゃんと賞金が用意されている。
垣田選手のように定量級、無差別級の両方で大活躍した場合、トータルで1,000万ルピア(約8万6,000円)ほどの額をその場で受け取ることができる。ジャカルタ州の最低法定賃金が今年ようやく300万ルピアに達した程度だから、これがいかに大金かお分かりいただけるだろうか。
そしてこの賞金は、『ジャルム』というタバコ企業の出資から捻出されている。インドネシアは格闘技に限らず、あらゆるスポーツイベントの背後にタバコメーカーがある。
たとえば、アイルトン・セナが存命だった頃のF1はタバコメーカーの広告だらけだった。今現在のインドネシアのスポーツ界は、それと一緒とは言わないがかなり近い。
最近ではタバコ製品の広告規制が厳しくなったとはいえ、試合中のマットの横でコンパニオンがタバコを売っていたりもする。
このようにスポーツイベントは、インドネシアの「今」を忠実に映し出してくれるのだ。
(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一)