じつは「静岡おでん」大手は東京発?B級グルメの普及の裏側
近年、「B級グルメ」と呼ばれるご当地グルメが全国に広まっている。
我が国は亜寒帯から亜熱帯までの地域にまたがる山岳国だ。年間平均気温や降水量は、同じ国でも地域によりまちまちであり、当然、物産も食文化もそれぞれ異なる。
たとえば、静岡おでんは「おでん」ではないと言われている。少なくとも、関東から来た人々が静岡おでんを見たら驚愕するだろう。具もつゆも食べ方も、普通のおでんとはまったく違うからだ。
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■とにかく安い!
しらべぇ取材班が訪れたのは、静岡市街にある居酒屋『かぶら屋静岡御幸町店』。静岡おでんの本場とも言うべき場所である。
まず、この店の特徴は「とにかく安い」ということだ。串焼きが80円、サワーが280円という価格である。一瞬、日本の物価水準を疑ってしまうほどだ。
そして何より、お通しがないことが優れたポイント。
お通しは日本の居酒屋独特の文化で、最近ではそうしたものを避ける人が増えている。たしかに、頼んでもない一品料理が来るのは煩わしいかもしれない。だが、かぶら屋でその心配は不要だ。
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■黒いはんぺん
静岡おでんは、色が黒い。つゆも黒ければ、はんぺんも黒い
これは白はんぺんがスケトウダラやサメを原料としているのに対し、黒はんぺんはイワシやサバなどの青魚を使うからだ。形も味も、白はんぺんとはまったく違う。だが静岡市民にとっての「はんぺん」とは、黒いほうを指すのだ。
静岡県は、豊富な海洋資源に恵まれた土地である。駿河湾は波も穏やかで、各国の遠洋漁業船の往来も盛んである。青魚の加工が、県の一大産業になっているのだ。現に静岡市では、缶詰工場が多く見られる。
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■静岡を飛び出した黒おでん
静岡第一テレビの番組『◯ごと』が、過去にこんな調査を行った。
それは「黒はんぺんはどこまで売っているのか」というものである。清水を起点に少しずつ離れていき、そのところどころのスーパーマーケットに黒はんぺんを取り扱っているかを聞いて回る。
すると西は名古屋、東は横浜までのスーパーマーケットで黒いはんぺんが売られているということだ。すなわち、静岡おでんはもうすでに静岡を飛び出しているのである。
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■逆輸入された静岡おでん
そしてじつを言うと、かぶら屋は東京に本社を置くチェーン店である。意外なことに、かぶら屋の静岡おでんは「逆輸入品」なのだ。だから、かぶら屋の店舗はむしろ東京都内に多い。
皮肉なことだが、静岡おでんの全国普及は東京の企業が担っている。黒いつゆのおでんが、関東地方でのスタンダードになる日もそう遠くはないかもしれない。
【かぶら屋静岡御幸町店】
住所 静岡県静岡市葵区御幸町4-2
営業時間 16:00-23:00 日・祝/15:00~22:00
(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一)