日本だけ注目?地方企業の救世主?「モンドセレクション」ってそもそも何なの?
コンビニでお菓子を手に取り、パッケージを見てみると、「モンドセレクション最高金賞」の文字。「賞を取っているなら味は確かだろう」と、直感的に買い物かごに商品を入れた経験がある人もいるのではないだろうか。
しかし、よくよく見てみると、かなり多くのお菓子に「モンドセレクション」の文字があることに気づく。この「モンドセレクション」とは一体何なのだろうか?
※「モンドセレクション」とは…
「モンドセレクション」は、1961年にベルギーの首都ブリュッセルに作られた民間団体である。活動内容は、食品や飲料などの対象商品について審査を行い、認証を与えるというもの。
●無料で与えられる“賞”ではなく、お金を払ってしてもらう“審査”
「モンドセレクション○○賞」と聞くと、まるで団体から一方的に与えられる賞のように思えるが、実際はモンドセレクションに審査料を払い、賞(認証)をもらう。審査料は1製品につき1150ユーロ、または1200ユーロ。日本円にして約14万円程度(2015年1月3日時点)と、決して安いとはいえない金額だ。
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●食品だけでなく、“化粧品”や“タバコ”も審査の対象
「モンドセレクション」と言われると、“食品の賞”というイメージを持っている人が多いだろう。しかし、審査対象は食品だけではなく、化粧品やトイレタリー(ボディケアやスキンケア用品など)、タバコまで含まれている。具体的には、以下の8カテゴリーが審査対象とされている。
・スピリッツ、リキュール
・ビール、水、ソフトドリンク
・食品
・チョコレート、製菓、ビスケット
・穀類製品
・ダイエット、健康食品
・化粧品、トイレタリー製品
・インターナショナル・ワインコンテスト(上記7カテゴリーの優秀品質セレクションに加え、ワインコンテストも開催)
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●審査基準は“味”や“見た目”だけではない
モンドセレクションの審査は、“味覚”、“衛生”、“パッケージに記載されている成分などが正しいか”、“原材料”などの項目に基づいて審査される。つまり、食べ物の審査でいえば、味覚や見た目だけでなく、「消費者に正しい情報を提供しているか」という観点でも審査される。
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●細かい審査基準は“明かされていない”
先述したようなおおまかな審査項目は公開されているが、細かい審査基準は明かされていない。モンドセレクションの賞を受賞した企業にも、審査基準や評価ポイントについては通常伝えられない。
各賞については、各専門家によって審査された得点の平均値を算出し、以下の基準に沿って授与される。
・優秀品質最高金賞:平均得点90%から100%取得商品へ授与
・優秀品質金賞:平均得点80%から89%取得商品へ授与
・優秀品質銀賞:平均得点70%から79%取得商品へ授与
・優秀品質銅賞:平均得点60%から69%取得商品へ授与
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●モンドセレクションに注目しているのは“日本だけ”?!
最新のデータは公開されていないが、『日経MJ』2008年11月14日号の記事には、審査対象の5割が日本からの出品で、日本から出品した食品の8割が入賞していると記述されている。
さらに、2014年度のインターナショナルハイクオリティトロフィー(3年連続モンドセレクションに入賞した証)が贈られた対象を見てみると、食品カテゴリーは74商品中71が日本の商品だった。ダイエット・健康食品にいたっては、45商品中44商品が日本の商品である。
実は、モンドセレクションは世界的にはそれほど有名ではない。しかし、日本ではサントリーがプレミアムモルツのCMで「3年連続モンドセレクション最高金賞受賞」と大きく打ち出したことをきっかけに注目が集まり、それ以来多くの日本企業がモンドセレクションの審査にエントリーしている。
●モンドセレクションの“効果”とは
モンドセレクションの受賞一覧を見てみると、地方企業が多いことに気がつく。これらの受賞企業について、受賞前後でどのような変化があったのか調べてみた。
変化のひとつは、「受賞によって需要が増えた」というもの。ある企業では受賞商品の売上が受賞前後で350%に増えたという例も見受けられた。地方企業の商品は広告に費用をかけられず、注目を集めることが難しいが、モンドセレクションをきっかけに注目され、需要が倍増するのだ。
もうひとつは、「ブランド強化によって価格競争から抜け出せた」というもの。食品の価格下げ競争が激化するなかで、地方企業が大手企業に価格で対抗できずに潰れるケースが目立っている。そんな状況下で、モンドセレクションを受賞したことによって商品のブランド力が強化され、価格競争から抜け出せたという例が多くあった。
世界的にはそれほど有名ではない「モンドセレクション」だが、“権威好き”な一面が否めない日本の消費者には、この賞は有効なようだ。遠く離れたベルギーの賞は、日本の地方企業再生の鍵のひとつになり得るといえるだろう。
(文/しらべぇ編集部・河津愛美)