【法律コラム】こっそりやってない? バレたら危険「ウソの忌引休暇申請」
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先日、実在しない親族が亡くなったと偽って、仙台市職員が“2008年~2013年の間に計12回にわたって不正な忌引きを取得”していたことが発覚し、問題となりましたね。
ざっくりとした計算で、一年間に平均2~3人の親族が亡くなってしまっていることになるじゃぁありませんか(汗)!!
おまけにこの件、昔亡くなったことになっていた叔父と同じ名前を出してしまい、嘘がばれてしまったという・・・同情はできませんが、なんとも切ない幕切れ(苦笑)。
新人ではなくベテランで役職にもついており、本来ならば、ほかの従業員の手本とならなくてはいけない人物であったはずなのに、実にけしからん話ですね。
さてさて、なんとも罰当たりなこの問題。
読者のなかには、「子ども時代に軽い気持ちで学校を休む口実に・・・」「アイドルのコンサートにどうしても行きたくて、一度だけ嘘をついて会社を休んでしまった・・・」など、内心「ドキッ」とした方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そんな「嘘の忌引休暇」について、「忌引休暇」という制度自体についても少し触れつつ、お話したいと思います。
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■「嘘の忌引休暇」はなんの罪に問われるの?
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いろいろ問題がありそうな「嘘の忌引休暇」。
本来欠勤で賃金が支給されないところを、嘘をついて不当に賃金を得ていたという事情がある場合、やりすぎると詐欺罪(刑法246条「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」)にあたる可能性があります。
でも、実際のところ、何らかの嘘をついて忌引休暇を取得したことで罪に問われることは少なく、発覚した場合、ほとんどが会社内の就業規則に基づき処分が下されるだけのようです。
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■労働基準法と忌引休暇
ちなみにこの「忌引休暇」ですが、法定休日や有休休暇、育児休業などと違い、現在の労働基準法では、企業側が就業規則に定める義務はありません。
忌引休暇が就業規則に定められていない場合、従業員は有休休暇などで対応していくことになりますね。
会社に忌引休暇が無い方・・・不満に思うお気持ちはよーくわかります。ですが、「うちの会社は忌引休暇がない!労働基準法違反だ!」とは言えないのでご注意を。
ただし、「忌引休暇が就業規則に定められているのに使えない」、「有給休暇自体が使えない」、はたまた「週1回若しくは月4回の休暇もとらせてもらえない」、となるとそれは問題があるので、一度、労働基準監督署や弁護士等の専門家等に相談してみてくださいね。
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■会社から受ける処分とは?
さて、少し話が逸れてしまいましたが本題に。
今回の問題の職員は、発覚後の不誠実な対応もあり、懲戒免職となりました。この処分が妥当かどうかはさておき、極めて悪質な場合、最悪、懲戒解雇等の処分を受けてしまう可能性だってあるんです。
さらに、不当に受け取った賃金に関しては返還を求められたり、会社側や個人に極めて重大な損害を与えてしまったことによって、損害賠償を請求されたりする可能性も…。
「ちょっとした」軽い気持ちで手を出したことの代償は大きいのです。
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■おわりに
なにはともあれ、嘘をつくことはいけません。
そして、自分が不当に利益を得ることで迷惑を被る人が必ずいるものです。自分が良い思いをするために人に嘘をついたり、迷惑をかけてしまったりすることは立派な社会人とはいえません。
オオカミ少年のように本当に大切な時に信じてもらえなくなってしまいます。ばれていないと思っていても、意外とみんな、気付いているもの・・・気をつけて!
(文/弁護士・佐藤大和)