事故が起きたら誰の責任? 生徒の青春を支える厳しい「顧問」事情
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大人のみなさんは青春まっただ中 の中学・高校時代を思い出して、「あの頃はたのしかったなあ」、「あの先生は怖かったなあ」なんて、振り返ることがあるのではないでしょうか。
筆者も、高校時代の「あの先生」のことを思い出すと怒りと虫唾が走り・・・オッホン! 今となっては良い思い出ですよ(苦笑)
さてさて、そんな青春の1ページを彩る「部活」について、今回はこんな質問をしてみました。
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Q.学生時代の「部活動」の顧問って怖い存在でしたか?
35.5%とは、筆者が思っていたよりも、意外に少なかったですね。さらにデータを見ると30代が44%、10代は25%という結果でした。良くも悪くも、やはり今は怖い先生は少なくなってきているのかもしれません。
さて、そんな「部活動の顧問」の先生ですが、外部の方にお願いしている学校もあるかと思います。
しかし、多くの学校の部活動では、学校の先生方が顧問に付いています。そして、生徒の皆さんも、学校の先生方が「顧問」をしていることに何ら疑問を持たないですよね。筆者もその一人でした・・・。
実は、学校の方々が「部活動の顧問」もやっていることって、当たり前とはいえない事情があるのです。
そこで、「部活動」と「顧問の制度設計」の話を中心に、過去の「部活動」に関する事故の裁判例を見ていきたいと思います。
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■義務はないのに、「全員顧問」というシステム
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「部活動の顧問」の現状について、ある調査データによれば…な、なんと、校長や教頭を除いた全国の中学校の先生の90%以上が、少なくとも1つ以上の部活動の顧問を担当しているとのこと。
これは「全員顧問制度」とも呼ばれるこのシステムですが、「先生は顧問をする義務を負う」というような規定があるわけではないのです。
文部科学省が告示する「学習指導要領」に基づいて定められる各学校の「教育課程」との関連性という点でも、部活動は、正規の教育課程とは位置づけられていません。
つまり、部活動というのは、生徒たちが正規の課程外で「自主的」に取り組むものということになります。
そのため、先生方は、「ボランティア」で部活動の顧問をほぼ強制的に引き受けているという状態・・・ただでさえ、多忙な先生方の負担が重くなる一方ですね(涙)。
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■部活動中の事故では、顧問が責任を負うことも…
サッカー部に所属する高校生が、部活動の試合中に落雷により負傷したという事案では、
「運動場に居て雷鳴が聞こえるときには、遠くても直ちに屋内に避難すべきであるとの趣旨」
の記載がある文献が多く存在していたこと、試合開始直前の雷鳴が聞こえるなどの天候の状況などから判断して、引率と監督を兼任していた先生には…
「落雷事故発生の危険が迫っていることを具体的に予見することが可能」
「予見すべき注意義務を怠ったものというべき」
として、学校側に3億円にも及ぶ支払いを命じています。
賠償額がかなり高額に及んでいることも注目ではありますが、何より引率や監督・指導にあたる先生は、生徒の命を預かっている立場の人間であるといえます。
なので、事故が起きやすいスポーツに関する活動を生徒が行う際は、監督や指導にあたる立場にある人間として、特に「生徒の安全への配慮」が先生に求められることになります。
それゆえ、顧問を引き受けることにより背負うことになる責任の重さは、決して軽いものではないといえますね。
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■おわりに
正規の課程外と位置付けられ、そこに携わる先生方への手当も、多くの場合は決して満足には支給されないまま、義務に近い形で「重責」を負いながら部活動の顧問を引き受けることとなってしまっているのが現状…。
この半ば強制的に近い顧問制度のシステムについては、すでに改革を求め動き始めている先生方もいるようです。
生徒たちのかけがえのない青春に向き合うことになる先生方が、もっと安心して、顧問をつとめることができる「仕組み」を作るための議論が、活発に行われるようになると良いですね。
(文/弁護士・佐藤大和)