日本の法律は特殊? 欧米だと浮気相手への慰謝料請求はなし!?
日本の「不倫」に対する法律はちょっと特殊?
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最近、当事務所には、不倫の相談が立て続けに入っています。某ドラマの影響ですかね?
さて、不倫問題は日本に限らず、世界中にある問題なわけですが、浮気相手についての日本の考え方が欧米から見て特殊ということは、あまり知られていないのではないでしょうか。
というわけで、日本と欧米の浮気の慰謝料請求をテーマに紹介します。
まずはこんな調査から。
なるほど。男性は3割程度ですが、女性の過半数は「お金で償うべき」だと思っているんですね。
確かに法律相談を受けていると、男性より女性の方が、「浮気相手を絶対に許したくない!」と言う場合が多いです。
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■日本の発想は世界的に少数派だった!?
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日本では、配偶者が浮気をした場合、配偶者に対してのみではなく、その浮気相手に対しても慰謝料請求が原則としてできます。
「このドロボウ猫・・・」という感じでしょうか。法的には、家庭が壊れた責任の一部を浮気相手も負うということ。しかし、欧米から見てこの考え方は必ずしも一般的ではないのです。
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アメリカの多くの州では、浮気相手に対する慰謝料請求が原則的に認められません。イギリスでも、浮気相手に対する慰謝料請求は1970年に廃止。
ドイツでも、慰謝料請求は旧西ドイツの時代から一貫して認められておらず、「失われた愛の慰謝料は存在せず」という格言まであるようです。
フランスでは慰謝料請求は認められていますが、金額が抑えられる傾向にあり、古い裁判例ではありますが、1フランという判決もあったようです。
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■なぜ浮気相手に請求できないのか
「配偶者以外の人と性交渉をしたというのは、まさに夫婦関係が破綻していたことの表われだ。
夫婦関係が破綻した後に性交渉した以上、浮気相手には夫婦関係が破綻したことに対する責任はない」
ということが理由の一つ。(う~ん、一理あるような)。また、脅迫のネタに使われかねないという理由もあります。
夫婦がグルになって、妻が誰か男を誘惑して、夫がその男から慰謝料を脅し取る「美人局(つつもたせ)」という犯罪がありますが、浮気相手に対する請求を法律上認めないことで、裁判所レベルでの美人局をできなくするという考えです。
美人局は浮気ではないので今回のコラムのテーマから離れてしまうのですが、法制度を設計する上では確かに考えなければいけないのでしょう。
心の傷を金額に換算しにくいという理由もあり、これは全くそのとおりだと思います。でも、だからと言ってゼロとか1フランとかにしなくてもいいんじゃないかな…とも思いますが。
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■一番悪いのは浮気者だから…
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また、間接的に関係するのが、懲罰的損害賠償制度です。
「一番悪いのは、『結婚しているから付き合えない』と言って断らなかった浮気者だ、こいつに天罰くらわせよう」
ということで、アメリカでは、浮気した配偶者本人に制裁的な高額の慰謝料を支払わせることもあるようです。
日本ではこれができません。日本の制度では、実際に生じた損害を回復する分しか損害賠償請求できず、プラスアルファの上乗せが認められていないからです。
一方、アメリカでは浮気した配偶者に対し高額の慰謝料を請求できるので、浮気相手から取れなくても被害回復が十分できるという面もゼロではないと言えます。
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■終わりに
結婚相手がいるのに浮気して、性交渉までしたら結婚相手を傷つけるのは、洋の東西を問わず同じ。これだけは確かです。
世界にはたくさんの素敵な人がいます。その人たちに時には心惹かれることもあるかもしれません。
でも、安易に誘惑に乗らず、生涯愛すると誓った人を一途に愛し続ける、後悔しないのはそんな人生ではないでしょうか。
(文/弁護士・佐藤大和)
【調査概要】
方法:アンケートサイト「マインドソナー」
調査期間: 2015/06/04– 2015/06/06
対象:全国10代~50代男女230人
(文/しらべぇ編集部・佐藤大和)