法律では救えない…?飲食店への「否定的口コミ」を削除できないわけ【法律コラム】
先日、飲食店の評判を投稿するサイト「食べログ」に投稿された書き込みが原因で客が激減したとして、書き込みを削除するよう訴えられた裁判で、カカクコム社の全面勝利となったことがニュースになっていました。
ニュースは飲食店に関するものでしたが、飲食店に限らず、例えば通販サイトの「Amazon」や「楽天市場」ではあらゆる商品に対し「これは星3.5」「これは星4.9」といった評価がなされていますから、他人ごとではない方も多いのではないでしょうか。
そこで、こうしたウェブ評価にまつわる法律の問題について、ニュースの事件を中心にお話しします。
では、まずはこんな調査から。
やはり…飲食店関係者の方々が肌で感じているとおり、ネット上の評価を気にしているお客さんは多く、評価の高低は死活問題のようです。
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■悪口は「罪」になる!?口コミの線引きは難しい
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もちろん、お店について考えを述べたり、こんなことがあったと話を広めたりする行為自体は、問題ありません。
でも、実は、めちゃくちゃな悪口を書いたり、広めたりして、お店の社会的名誉を汚すような行為は、業務妨害罪、名誉毀損罪や侮辱罪で処罰される可能性もあるのです。
ただし、その線引きは難しいですよね。基本的には、お店で起こったことを真実そのまま語り、動機としても、「このお店はお勧めできる/できないという情報を他の人に伝えたい」といったものなら問題ないということになります。
ですので、言い換えれば、嘘はダメだということです。当然ですね。
それから、憂さ晴らしだけが目的だったり、「この店の評判が落ちれば、ウチに客が流れてくるぜ」といったものだったりするのもダメ。
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■口コミを削除できない理由
今回の事件の場合、「料理が出てくるまで40分くらい待たされた」との書き込みにより、お店の評判は下がったわけです。
ですが、待たされたことが嘘であることの証明や、悪徳な目的による書き込みであることが証明されたわけではないため、書き込みは正当な範囲内で、カカクコム側としても削除はできないということです。
高等裁判所も、削除について
「他人の表現行為や得られる情報が恣意的に制限されること にもなり、容認できない」
と述べています。
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■お店の不満は法律で救えない?
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お店としては、自分のところの店名が勝手に使われることについて不満がある方もいるようです。この点、問題はないのでしょうか。
法律上、一定の場合には、「名前を勝手に使われない権利」は保護されると考えられます。
例えば、名もなきバッグメーカーが「シャネル」を名乗ったら問題であることは明らかですね。
今回の「食べログ」の事件ではこの点も争われましたが、カカクコム社が他所の飲食店の名前を借りて、飲食店を経営しているわけではありません。
また、他人が「食べログ」を運営しているように見せかけているわけでもなく、お店の紹介のために店名を挙げているだけなので、法律上問題がないと判断されました。
「有名になって繁盛するならいいじゃん」という店ばかりではなく、隠れ家的雰囲気をウリにしているお店。
そして常連客を大事にしたいお店の中には、「店名は出さず、そっとしておいてほしい」というお店もありますが、残念ながらその気持ちを法律上救うことは難しいのが現状です。
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■終わりに
法律的には、「極端なものでない限り、口コミは立派な意見。耳を傾けて、改善に努めよう」ということになります。
ただ、一度客足が遠のいてしまうと、改善してもそれがなかなか伝わらないという事情について、何とかできないのかな、という思いが残りますね・・・。
(文/弁護士・佐藤大和)