日本のテレビ界は『わたしを離さないで』をどこまで描けるか
閉ざされた世界で集団生活をし、気がつけば謎の中心で生きているとしたら、あなたはどうするか?
新年第1回の「芥川奈於のいまさら文学」、取り上げるのはカズオ・イシグロ/著「わたしを離さないで」(2005)。そんな不思議な世界へ私たちを誘う一冊だ。
主な登場人物、キャシー、トミー、ルースは、幼い頃は何も考えることなく絵を描いたり詩を読んだり、想像力豊かに緑につつまれた寄宿舎・ヘールシャムでゆっくりと日々を過ごす。
しかし、18歳になりそこから「世の中」に出た時、あまりにも残酷な現実を突きつけられるのだ。その間に、彼女、彼なりの恋物語や嫉妬、そして悲しみが訪れる。
トミーとルースは恋仲に落ち、それまで仲の良かった三人の間には亀裂が生まれる。そして、それ故に、必然的にキャシーがこの本の「語り手」となっていく。
二十歳前後で、「普通に」恋をしたり、生きていくことさえもままならない世界に置かれたら、あなたはどうするか?
子供時代、そして大人になった彼らの日常に、何度も自分を置き換えて問いかけたくなるのがこの作品である。霧の中に包まれたような読了感を得たければ、ぜひ原作の小説を読んで頂きたい。
さて、この小説が新年1月15日(金)よりTBSでドラマ化されることで話題になっている。主演の綾瀬はるか、三浦春馬らは、どのように「彼ら」を演じていくのか、楽しみでもある。
(文/芥川 奈於)