広告を言語分析して生まれた「2016年を象徴するキャッチコピー」が衝撃的
広告は「時代を映す鏡」ともいわれる。この1年間の広告コピーの特徴から、いまの日本を映し出すとしたら、どんなものになるのだろうか。
コピーライターやCMプランナーが所属する日本最大の団体「東京コピーライターズクラブ(TCC)」は、1年間の広告コピーを自然言語処理に掛け、統計的な手法を使うことで今の時代を象徴する広告コピーを生成してみた。
このプロジェクトは、今年で2年目。2016年の分析に使われたのは、TCC賞で選考対象となったテレビCMからポスター、webなど様々な媒体の広告コピー24,629件。
その中から、もっともよく使われた「4単語」の構造で、さらにそれを頻出順に組み合わせ、統計的に「時代を映す」広告コピーが作れないかという試みだ。
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■赤丸急上昇ワードは「日本」
その結果、広告への出現率が、昨年比でじつに1.6倍も増加した名詞が明らかになった。それは「日本」である。
「2020年の聖火が照らす東京を、日本を」(JXエネルギー)
のように、オリンピックを意識したものや、日本代表選手や団体を応援する広告表現が増えたこと。
「日本の挑戦を、サポートするという誇り。」(野村ホールディングス)
「日本も、私も、ここからだ。」(トヨタ自動車)
のように、企業が日本人やそのアイデンティティを鼓舞するような表現が増えたこと。
「ようこそ、「日本品質」へ。」(パナソニック)
「日本の美意識が聴こえてくる。」(サントリー)
のように日本製品であることの付加価値をアピールしたものに加えて、
「日本一の温泉で、世界のみんなを沸かせたい」(大分県)
「日本のひなた宮崎県」(宮崎県)
など、地方や自治体発信の広告が元気だったことが理由として考えられる。
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■2016年の広告マッシュアップ
再頻出の広告コピーの構造が、すべて名詞の4単語で構成されていたことから、さらにその構造の中で再頻出の単語順に意味が通じる組み合わせを処理した結果、2016年の広告マッシュアップが完成した。
「あなたたち日本人」
確かにこの一年、激変する世界情勢や、政治・経済の話題、スポーツイベントの盛り上がりの中で、私たちが「日本人であること」や「日本」という国について、あらためて考える機会が増えているように思う。
「広告が時代を映す鏡」だとすると、2016年は、広告コピーが日本人のアイデンティティに語りかけた一年といえそうだ。
なお、今回調査した詳細なデータは、かっこ株式会社のサイトで見ることができる。
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(文/かっこ株式会社・成田武雄 企画協力/東京コピーライターズクラブ)