朝日新聞の報道に出演女性が抗議した「震災映画」 再上映がスタート
画像出典:『ガレキとラジオ2014』公式サイト
東日本大震災で甚大な津波被害を受けた宮城県南三陸町。そこで被災者が運営する臨時災害ラジオ局「FMみなさん」の誕生から活動終了までを追ったドキュメンタリー映画が、『ガレキとラジオ』である。
2013年4月13日に公開され、当初の劇場公開終了後も全国の市民が自主上映会を続けて、収益を被災地に寄付する活動などを行なっていた。
ところが、2014年3月5日、朝日新聞が伊藤喜之、高津祐典両記者による署名記事で「震災記録映画でやらせ 女性にラジオ聴くふり強いる」と報道。
記事では、「女性は制作者の求めに応じて演技をしてしまったことに罪悪感を抱き、苦しんでいる」と書かれていたため、被災者および支援者の善意を踏みにじるものとして、映画は多くの批判を浴び、上映は中止された。
しかし、3月17日、取材を受けた出演女性が反論し、
「朝日新聞様 伊藤さんという記者に取材された南三陸町の高齢の女性被災者です。五日の記事は私が話したことと違うことが書かれています。どうかどうか映画を戻通りにしてください(原文ママ)」
と、地元応援者らと抗議の手紙を公開。
さらに、事態が様相を転じたのは4月3日。取材を受けた女性の代理人を務める仙台中央法律事務所の小関眞弁護士が朝日新聞社に公開質問状を送付。その中で、3月5日付けの報道について、
「事実に基づかないねつ造記事で『やらせ』を批判していると評価されても仕方がないものであると考えます」
「この記事は『誤った報道』であることは明らかです」
と断じ、新聞倫理綱領に基づいて記事の訂正を求めたのだ。
しらべぇ編集部が小関弁護士に電話取材したところ、朝日新聞社とはその後2回面談し、文書を通じて、記事を訂正する予定はない旨の回答があったとのこと。
出演女性の「意に反する内容であり、誤った報道である」という思いに答えるものでは、なかったという。
こうした一連の報道によって批判を浴びた映画は、震災から3年を経た2014年3月時点での「出演者インタビュー」などを新たに加えて再編集。『ガレキとラジオ2014』と題名を更新し、11月9日から上映を再開する。
制作スタッフには、上記の手紙や公開質問状で取材記事の“捏造”を訴えた出演女性から、上映再開を祝して自ら手づくりした造花が贈られた。
なお、朝日新聞は9月11日に木村伊量社長が記者会見を開き、いわゆる「吉田調書」についての誤報を認めて撤回。慰安婦報道についても、「強制連行があった」とする証言記事を取り消しておわびするなど、報道の信頼性を揺るがす問題が続いている。
※『ガレキとラジオ2014』公式サイト:http://www.311movie.com/
【朝日新聞社に対する出演女性代理人からの公開質問状(許可を得て全文掲載)】
(取材・文/しらべぇ編集部・タカハシマコト)