吉野家を食べ尽くす!こだわりの食べ方②【マッキー牧元の世界味しらべぇ】
「牛丼なんて、そんなもんは、ちまちま食べずに、一気呵成に、何も考えずに食べればいいんだ」という考え方もある。それは正しい。だが吉野家歴40年の僕は、様々な変遷を経て、自己流のお作法を完成させた。
コンセプトは、単一の味が続く牛丼に、いかに変化を加え、楽しんでいくかということにある。まず牛丼の注文は、「アタマ特(あたまどく)」。要するに、ご飯は並盛で、牛肉だけの特盛りにする(ただしこの名称は通じない店も多いので、「アタマだけ特盛りに」と注文のこと)。理由は、牛肉とご飯のバランスが最も優れているからである。
それを証明するために、今回は、アタマ大盛りを頼み、いかになるかを実践してみた。ちなみに「アタマ大盛」は、正式メニューとなっている。大盛りが460円に対し、アタマ大盛は390円。そのため、店員が新人だと、「アタマ特盛」は通じず、「アタマ大盛りしかできません」といわれてしまうこともある。その際は、店舗に必ずベテランが一人はいるので、「その人に聞いてください」と、押し通さねばならない。
サイドオーダーは、お新香。玉子1個と白身抜きの黄身だけ1個(黄身だけの注文も可能な吉野家って素敵)。お新香の効用は後ほど述べる。1個の玉子を黄身だけにしたのは、白身が2個だと汁分が多すぎて、牛汁の味が弱まり、バランスが悪くなる点と、黄身の甘みを際立たせることにある。バリエーションとして、1個を半熟玉子にするという手もある。さあすべてオーダーしたのこれである
ただしこれは「アタマ大盛」。
1.まずそのままで食べる。シンプルな牛丼とご飯を楽しもう。
2.紅生姜を散らし、牛肉と混ぜ、酸味と辛味が加わった変化を楽しむ。
3.お新香を丼にかける。満遍なく散らす。これにより食感の変化が生まれ、かつ乳酸菌のうまみが加わって味も変化、さらに白色が交じった景色と、三つの変化が生じる。
4.玉子を両方溶き、合わせる。そこに大量の七味をかける(吉野家の七味は、陳皮が多く辛くない)。牛丼は半分くらいになっているので、中央に穴をあける必要なく、万遍なくかける。
5.底から掘り起こすようにして混ぜ、一気呵成。
6.さらなるバリエーションとして、一旦牛肉を玉子か新香の皿に避難させ、玉子かけごはんを泡立つほど、混ぜに混ぜる。そして牛肉を戻す。これによりふわふわの食感となり、新たな宇宙が広がる。写真のように紅生姜を混ぜ込んでもうまい。
ここで見てもらいたいのが牛肉を戻した状態である。順調に食べ進むとこのようにご飯の量に対して牛肉が少ない。やはり「アタマ大盛」ではバランスが悪い。「アタマ特盛」である。
さらに高度な作法として、並牛丼を頼み、途中で「牛皿の大盛り」を頼むという手もある。これは熱々の牛肉を食べられるというメリットもあるが、値段が高くなるという問題も一方では残る。
さあ、以上の手順により、吉野家の牛丼でありながら吉野家の牛丼を超えた達成感が味わえる。同時に、ファーストフードでありながら、ゆったりとした時間も味わえる。
ただし欠点は、「アタマ大盛」でもサイドメニューを合わせると610円、さらに「並牛丼と牛皿の大盛り」にすると890円もかかってしまうことだ。「アタマ特盛」とのセット、期間限定で「マッキーセット」として売り出してくれたら、と願うのだが、吉野家さん、どうですかねえ。
(写真・文/マッキー牧元)