【対立より共生】イスラーム教とキリスト教が共に生きるインドネシアの暮らしとは?
そこでは、一本の道を挟んで、イスラーム教徒によるアッラーへの祈りとキリスト教徒の聖歌が交差する。
道の西側は、東南アジア最大級と言われるイスラーム教徒の聖地、インディオクラル・モスク。向かってそびえたつのは、カテドラルと呼ばれるカトリック教会。異なる宗教を信ずる人々が、隣り合って祈りを捧げる。
場所は、インドネシアの首都、ジャカルタ。宗教をめぐる対立が話題になる昨今、この国では多様な宗教を信ずる人々が共に暮らしています。彼らがどのような暮らしを送っているのか、その実態に迫った。
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■世界一のムスリム大国、インドネシア
インドネシア国民の約9割を占めるのはイスラーム教徒であり、世界最大のイスラーム大国とされています。定刻になると町中にコーランが響き渡り、お店にはイスラーム教徒にとって適切な調理をした食品であることを示す「ハラール」の文字が目立つ。
また、街を歩いてみると、肌の露出を控えるための「ヘジャブ」を身にまとった女性の姿も。
ただ、この国では、イスラーム教徒であることが義務付けられているわけではない。求められるのは、唯一神の信仰、つまりは宗教を信じること。
イスラーム教徒だけでなく、カトリック、プロテスタント、仏教、バリ・ヒンドゥー教など、まさに多様な宗教が混在する国なのだ。
そして、冒頭でも述べたように、下の写真のような雄大なカトリック教会がモスクに隣接。まさに、イスラーム教とキリスト教の共生の象徴といえる。
宗教を越えて、共に働き、共に暮らす。職場には多様な宗教の人々が混在し、家族の中でさえ、宗教が異なることは珍しくないという。
ムスリム教徒の父を持つというキリスト教徒によれば、「この国では、互いの宗教をリスペクトしている。過去には少なからずテロなどもあったが、他の国で起きているような諍いは少ない」とのこと。
実際、世界最大のイスラーム教徒の人口を誇る国でありながらも、中東における過激な動きに同調する動きは他のイスラーム諸国に比べても少ないようだ。
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■「違い」は尊敬しあうきっかけ
また、インドネシアでは、初対面の相手であろうと「何を信じているか」「どの宗教か」を遠慮なく聞いてくる。日本人はついつい敬遠しがちな質問だが、この質問こそ相手を知り、リスペクトするための第一歩なのかもしれない。
宗教だけなく、民族も多様なインドネシアは「多様性の中の統一(Bhin-neka Tunggal Ika)」を国の標語として掲げている。
多様な宗教の共生が一つのテーマになるであろうこれからの時代、宗教の壁を乗り越える糸口が、この国にあるのかもしれない。
(文/しらべぇ編集部・じゅんぺい)