【蔵元コラム】夏の酒蔵はヒマ?実は…来期の「酒の味」を左右するときだった!

コラム

2015/08/15 19:00

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©iStock.com / sunabesyou

みなさんこんにちは。萩野酒造八代目蔵元の佐藤曜平です。ちょっと色々と忙しくて…コラムの更新をご無沙汰しておりました。

え? 酒は冬に造るから、夏場はヒマなんじゃないの? と思われた方、鋭いですね。

日本酒造りは雑菌汚染を嫌うので、雑菌の活動が鈍る気温の低い冬場に造られることがほとんど。弊社もだいたい10月から3月下旬にかけて日本酒を造っています。なので、夏はヒマだったのです。


 

■昔と今の大きな「夏」の違い

昔は、アルコール類は地酒しか飲むものが無かったので、たいしたことのない安酒でも地元だけで消費できていたのですね。

番頭さんがトラックに積んで近場の酒屋さんをのんびり回り、お茶を飲んで帰ってくる。蔵元は地元の有力者でそこそこ金持ち。酒造りには一切手を出さずに全て杜氏に任せる、そんな時代。

sirabee0814kuramoto2-2©iStock.com / morosuke

しかし、そんな時代が長く続くわけもなく、地方大手の進出、兵庫の灘・京都の伏見の超大手の脅威。

安い焼酎や発泡酒等の様々なお酒が氾濫して地酒を駆逐し始め、このような時代の流れを読むことが出来なかった蔵元さんはどんどん辞めていきました。

そんな時代を見越していち早く高級酒路線に切り替え、地元はそこそこに大都市圏をターゲットにすることが出来た蔵元さんが、比較的今も元気がいいようです(※あくまで筆者の酒蔵の場合)。

という訳で、現在は販路と造る酒質が昔に比べて大きく変わったということがポイントに。

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では、この時期は何をしているのでしょうか(ここでは、あくまでも少量生産で造りも販売も、その他もいろいろしなくちゃならない筆者のケースになります)。


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■日本酒づくりはオフシーズンこそ勝負

では、ここで筆者の今月のおおまかなスケジュールを公開しちゃいます。8月は20日以上出張で蔵にいません。蔵に戻れば溜まった仕事が待っています。

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① 営業活動で日曜日はナシ

大きい蔵元さんには何人もの営業マンがいますが、弊社のような小さな蔵の場合は基本的に蔵元一人、いてもあと一人くらいです。

有り難いことに年々日本酒関連のイベントも増え、北は北海道から南は沖縄まで、全国津々浦々に赴くことが多くなりました

今月は何もない日曜日が一日もありません。イベント以外にも遠方の得意先にご挨拶にお伺いしたりと、やることは尽きません。

新幹線は私にとってのまさに行商列車。年間の運賃だけで新車が買えちゃいますよ(笑)。このコラムも新幹線内で書いています。また、昔と違い、営業範囲は日本全国どころか海外にまで広がっています


② オフシーズンこそ勉強

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テキトーな安酒でも、造れば地元で消費できていた昔と違い、現代の日本酒造りは常に進化しており、ボーっとしているとアッという間に置いて行かれてしまいます

大都市圏で戦える酒造りを続けて行くには、オフシーズンのこの時期こそ様々な蔵元さんを見学させていただいたり、新しい設備や微生物のことなどを勉強したりすることがとても重要に。


③ 日本酒を広めていくための活動

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多くの蔵元さんが自身の都道府県の酒造組合に所属しており、酒造組合内にはさまざまな委員会があって蔵元さんが所属しています。

ちなみに筆者が所属しているのは「宮城県酒造組合 需要開発委員会」。その名の通り、宮城の日本酒を広めていくための様々なイベントの企画・運営に携わっています。

その他にも原料米や技術関係等、さまざまな委員会がそれぞれ活動しています。酒造組合の活動をシカトする蔵元さんもいますけどね。

というわけで、休みがほぼなく、蔵から出られない酒造り中の冬、営業、勉強、酒造組合の活動であちこち行く夏、どっちもヒマでは無いんですね。

夏は出張で不規則な生活になりがちなので、むしろ冬の方が規則正しい生活を送れて健康的でいいかもしれません。

でも、出張先ではそこの名物を食べたり、時間が空けば観光もしますので、そんなに苦にはならないですけどね。ただ、出張が多すぎて家庭がヤバいことになっている蔵元さんも多いと聞きますけど…。

そんな訳で、あちこち行ってる間にアッという間に秋が来て、またすぐに酒造りが始まっちゃいます。来期の酒の出来を、この夏が左右すると言っても過言ではありません。

暑いのは嫌いですが、ボチボチ頑張って行こうと思います。それでは。

(文/萩野酒造・佐藤曜平


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