部下に食事代をおごらせようとする上司…これってパワハラになるかと思いきや…
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職場でのいじめともいえる「パワハラ」、つまり「パワーハラスメント」が社会問題になっている。
そんな「職場におけるパワーハラスメント」の定義として、以下の文言がある。
同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・肉体的苦痛を与える又は職場関係を悪化させる行為
※厚生労働省「みんなで考えよう!職場のパワーハラスメント あかるい職場応援団」ホームページより引用。
パワハラには暴力や暴言による直接的な行為だけでなく、「上司が部下に食事をむりやりおごらせる」といったケースも該当する可能性があるらしい。
これは具体的にどういうことなのか、弁護士の峯岸孝浩氏にくわしく聞いた。
■上司が部下におごらせるのはパワハラ?
罪に問われるとしたら恐喝罪でしょう。ただし、部下が上司におごるということは多くはないとしても、交際の一環といえなくもないので、通常の交際との区別がしにくいはずです。
そのため、よほど悪質な事案でない限りは、恐喝罪に問うのは立証が難しいと考えます。
悪質な事案とはどういうものだろうか?
さらに話を聞くと、熊本市の職員が部下に食事代をおごらせた事案がある。当時、メディアに取り上げられた有名なケースだ。氏によると、これは恐喝の可能性がある、とのこと。
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■上司が部下に100万円以上もおごらせたケースとは?
この事件では、上司が部下に対し「床に正座をさせて長時間にわたり説教する」、「書類の決裁をしない」などの嫌がらせをしたうえ、寿司や焼肉など、2年半にわたり総額100万円以上をおごらせました。
恐喝罪として処理されたか否かは不明ですが、普段の行為態様の悪質さからすると、上司という立場を濫用して無理矢理おごらせたことは想像に難くありませんし、金額も非常識なほど高額ですのでとても交際の一環とはいえません。
さすがにこのレベルでは恐喝罪に該当するのではないかと思われます。
被害者は精神的苦痛を受けた上に、100万円以上も金銭的負担を強いられた。一方、加害者である職員は6ヶ月の懲戒処分を受けた。
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企業コンプライアンスの徹底でも根絶は難しそうなパワハラ問題。いつもの職場でその兆候が見られた場合、早めに対策をとっておきたい。