オシャレに命がけ 貧困国のファッショニスタ「サプール」の哲学

2016/04/08 18:30


こんにちは、スタイリストの久保田(フランソワ)です。

昨年、コンゴ共和国のおしゃれな男たち「サプール」についてコラムを書きましたが、その彼らにスポットをあてた写真展が、今月10日まで西武渋谷店で開催されるということで、早速お邪魔してきました。

サプール


画像をもっと見る

■会場に溢れるサプールの哲学

展示

同展には、写真家・茶野邦雄氏によるサプールの写真が200点以上展示されています。写真撮影OKということで、来場者はみなたくさん写真を撮っていました。

サプール

今回とくに「いいな」と感じたのは、会場のところどころに彼らの哲学が掲示されているところ。たとえばこんな感じ。

サプール

「サップとは奇抜さ、健全な精神、心の平和、ステップの踏み方、スタイルの良さや雰囲気を追求し、自分が楽しんでなおかつ人も楽しませるもの」


覇権争いや戦争ではなく、自分自身を磨きあげることで人を楽しませることに人生をかけた彼らの言葉には、受け継がれてきた平和への思いと人生訓を感じることができる。

中でも印象的だったのは、あるサプールの写真の下にあった、この一文。

サプール

「いい格好をしていると争いは生まれないんだよ」


日本ではオシャレやファッションという言葉に、ともすればある種の偏見が含まれているように思える。「所詮は生活に余裕のある者のお遊びだろ」というようなニュアンスが、それだ。

だからこそ、貧困状態や生真面目な場でオシャレうんぬんということを持ち出すと、とたんに「不謹慎だ!」ということになってしまう。

その論法でいけば、国民の多くが貧困にあえぐ地域で、収入のほとんどを衣服につぎ込みオシャレを楽しんでいるサプールなど「じつにけしからん!」ということになるのだろうか。

でも、ことサプールに関しては、金持ちが余ったお金でオシャレに精を出すということとはまったく異なり、極端に少ない収入の中でも全力で、場合によっては命がけでオシャレをしている

おそらくは先進国と比べ娯楽の少ないこの国の人々にとって、サプールの存在はアイドルであり、彼らが街を歩き回ることは一級のエンターテイメントであり、大袈裟でなく平和を守るヒーローなのだ

彼らが頑張って(←ここ大事)オシャレをしている限り、そこに争いは生まれないのだから。


関連記事:【コラム】世界で最も貧しい国の男たち“サプール”が全力でオシャレする理由

■生き様が込められた1枚

最後に、今回の写真展で個人的にいちばんお気に入りの作品を紹介したい。

サプール

「ダサい格好じゃ始まらない。神様もそう思ってるに違いない


赤道直下らしく青く高い空、裕福とは程遠いバラックのような住居。それらを背景にまるで神への供物を捧げているような、あるいは天からの贈り物を受け取っているような仕草で、カラフルな服に手を差し出すサプールの男性。

この1枚に彼らの精神、生き様が込められているようで、しばらく写真の前から動くことができなかった


というわけで、ビジュアルだけでなくサプールのマインドが伝わる素晴らしい写真展を堪能させていただきました。これからもオシャレで自分が楽しみつつ、それ以上に周りを楽しませていこうと思います。


▼しらべぇ殿堂入りを果たしたサプールに関する前記事はこちら

世界で最も貧しい国の男たち“サプール”が全力でオシャレする理由

【THE SAPUER ーコンゴで出会った世界一おしゃれなジェントルマンー】
期間:2016年3月29日(火)〜 4月10日(日)
10時〜21時(日・祝は〜20時/最終日は〜17時)※入場は閉場の30分前まで
会場:西武渋谷店A館7階 特設会場
入場料:500円

(文/久保田フランソワ

コラムアフリカファッション写真展
シェア ツイート 送る アプリで読む

編集部おすすめ


人気記事ランキング