川奈まり子氏、AV女優・男優の人権を守る団体を設立へ
「AV出演者は労働者でなく、表現者だ」AV女優・男優の人権を守る団体を設立する、元AV女優で作家の川奈まり子さんにお話を聞きました。
■守られるべきAV出演者の3つの権利
川奈さんは、「団体を作ることによって3つの権利を守りたい」と語る。
川奈:第一は人権。プロダクションに所属することが「雇用関係を偽装」するようであっては絶対にいけません。本来の「個人事業主による業務委託契約」であることを、もう一度はっきりすべき。
実際、AV業界内でも「AV女優を管理」していると認識されている部分があり、業界全体の体質改善が必要です。
そのために出演者とプロダクションが取り交わす「業務委託契約書」のひな型を作ります。同じく、対メーカーの契約書・出演同意書を用意して、NG項目などを自分の意思で確認・決定できる権利を出演者自身に認識してもらいます。
第二は、活動する権利。
川奈:AV=悪になってしまうと、やりたくてやっている人の活動場所を奪ってしまう恐れがあります。映像に出演する表現者としての自由と権利を守りたい。
そのため、「AV出演マニュアル」のようなものを検討しています。出演するにあたっての心構えや意識の持ち方をまとめたものです。
AV出演のかたわら、風俗店に勤務する女優さんもいます。でも、映像に出演する時間は「セックスワークではなく表現者としての自覚」を持ってほしいのです。
そして第三は、生存権。
川奈:AV関係者は、根強い職業差別を受けます。たとえば、夫(AV監督の溜池ゴロー氏)がAV制作会社としてオフィスを借りようとしたら、なかなか審査を通らないでしょう。女優さんが家を借りるときも同様です。
出演者は個人事業主であるがゆえ、守ってくれる人も相談する相手もいない。差別を受けても、問題をひとりで抱え込んでしまうことが多いのです。
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■AV出演者の尊厳をおとしめない「相談窓口」を
AV女優や男優には、同業の友人がいることも多い。しかし、いない場合も少なくなく、個人事業主という立場はきわめて孤立しやすいという。
川奈:仮に撮影現場でトラブルが起きたとしても、プロダクション社員であるマネージャーがメーカーとの関係を断ち切ってまで女優の味方をしてくれるとは限りません。だから、私たちが立ち上げる団体では、「AV出演者の相談窓口」も用意する予定。
現状、相談を受け付けている窓口もありますが、中には「AV出演は売買春の一形態であり違法」「有害危険業務だ」と主張する団体もあります。
これでは、相談しても逆に「私が犯罪行為をしていることが問題で、原因は私にあるんだ」と相談者を傷つけることにもなる。
川奈さんは「AVは完全に合法」という立場。「こうした団体を立ち上げること自体を邪魔だと感じる人もいるかもしれない。だが、曲げる気はない」そう語っていた。
■出演強要問題を「AV産業が悪」という問題にしてよいか
AV出演強要問題は大変な問題だが、「AV出演は違法で有害危険業務」「AV女優の実態は個人事業主・表現者ではなく労働者」といった考えが広まることは、差別意識を強める恐れがある。
「被害者を救済する」という思いが、逆に出演者たちを傷つけ、追い込むことになっては本末転倒だ。
ただ、川奈さんは「今回の件はいいきっかけになる」と話す。問題が起きないとなかなか動かない業界。出演者と労働者性を改めて見直すことができるからだ。
そして団体設立のスピードアップを目指すという。プロダクションやメーカーへの働きかけを含め、できる限り早く進められれば。そう語った。
(文/しらべぇ編集部・たつき あつこ)