イスラム教の断食明けと「汚職」の関係…不正横行のワケとは
インドネシアでは、公務員の腐敗が社会問題に
2016年のイスラム教の断食月は、7月5日まで。
それを過ぎると、イスラム圏の国々では「バカンスシーズン」に突入する。日本人にとっての正月がこの時期にある、という表現が最も近いだろう。それらの国や地域の企業では断食月明けに一斉休業するため、イスラム教徒ではない者も一緒に休暇を取るのが普通だ。
そしてこうした長期休暇では、何かと先立つものが必要になる。だからほとんどの企業では断食月明けに合わせてボーナスが支給されるが、宮仕えではない人々は自力で金策をしなければならない。
その様子を観察していくと、日本ではまずあり得ない光景に突き当たる。
■あの手この手で「金策」
インドネシアは世界最大のイスラム人口を誇る国。断食明けのバカンスシーズンに入ると、大勢の市民が都市部から地方部への移動を行う。その目的は里帰りや国内旅行といったものだ。
そして断食明けが近くなると、特に貧困層の市民や公務員は様々な手段を用いてまとまった金を手に入れようとする。
よくあるのが、売春婦による外国人への声かけだ。ジャカルタ市内の外国人がよく通う飲食店などで、売春を生業としている女性が「営業」を始める。しつこく付きまとった末に「お金ちょうだい」とせがみ、トラブルに発展してしまったという例はしらべぇ編集部にも何件か報告されている。
売春婦でなくとも、流しのギター弾きやストリートミュージシャンの類も似たような行動に出るという。彼らの意識からして見れば、金を持っている外国人がそうではない現地人に施しを与えるのは当然。従って、たとえ高額の札束を渡しても決して「ありがとう」とは言わない。
■断食明けと汚職
公務員に至っては、さらに悪質である。
インドネシアは、世界的に見ても汚職が蔓延している国だ。様々な難癖をつけられ、高額の罰金を要求されたという報告が相次いでいる。この「罰金」とは法に定められたものではなく、言わば強大な公権力を振りかざした賄賂要求。
外資系企業のオフィスに突然やって来て、些細な法律違反を見つけては法外な罰金を言い渡す。そして、その金は国庫には行かず、警察官個人の懐へ…。
残念ながら、そうしたことが日系企業のインドネシアへの進出意欲を削いでいるという現実もあるのだ。
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■日本人は狙われやすい?
断食明けの近い時期にインドネシアへ旅行に行くのは控えたほうがいいとの声も。
特に日本人は「金持ち」である。実際にそうかはともかく、現地の貧しい市民の間では「日本人は豊か」というイメージを持たれている。しかも日本人は、中国人や韓国人と比べると自己主張が苦手で、あまり怒らない。要は格好のカモにされてしまうのだ。
イスラム教の断食とそれに伴う行事は、我々日本人にとっても非常に注目に値する。だが一方で、外国人を狙った詐欺まがいの行為や汚職も横行しているのだ。
(文/しらべぇ編集部・Sirabee編集部)