ドーピングはごまかす手口もヤバい!スポーツ界の闇に切り込む映画
いよいよ8月5日に開幕が迫ったリオデジャネイロ五輪。4年に一度の世界的なスポーツの祭典を前に、昨今「ロシア陸上チーム、ドーピングで出場停止か?!」というニュースが報じられた。
ロシア陸上界は組織ぐるみでドーピングを行なっていたとされ、口封じのためか死亡者も出ているという。
そんな物騒な話題がスポーツ界を揺るがしている中、『疑惑のチャンピオン』という映画が封切られた。これは、ドーピングというタブーに鋭く切り込んだ実録のドラマである。
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■ガン克服から前人未到の7連覇を達成した男
もっとも過酷な競技のひとつと言われ、夏季オリンピックとサッカーワールドカップに並び、世界三大スポーツに数えられることもあるツール・ド・フランス。そんな世界的なスポーツイベントで、前人未到の7連覇を達成した男がいた。
彼の名はランス・アームストロング。アメリカ合衆国テキサス出身の彼は、25歳のときに生死の境をさまようほどの重度のガンに冒されながらも、大手術とリハビリを耐え抜いて克服し、そのわずか3年後の1999年に奇跡の初優勝を果たしたのだった。
しかし、そんな絶対的王者のセンセーショナルな活躍に、あるひとりのジャーナリストが疑念を抱く。
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■ドーピング検査をすり抜けるための生々しい手口とは!?
勝利への執着が強い野心家のランス。じつはその活躍の陰で、ドーピング・プログラムの最先端を行く医師のミケーレ・フェラーリと手を組み、チームぐるみで禁止薬物を常用していたのだ。
彼が用いていたのは、体内の赤血球を増やし、持久力を向上させるエリスロポエチン、通称「エポ」と呼ばれる薬剤だ。フェラーリ医師の厳密な管理のもので行なわれ、「スポーツ史上もっとも医学的に高度なドーピング」と呼ばれたこの手口は、非常に巧妙で生々しい。
さらに映画では、ランスが疑惑の目を向ける検査員やライバルに対し、ほとんど恐喝や開き直りに近い振る舞をする姿も描かれている。
それほどまでに、ツール・ド・フランスにおける、ランスの「世界のスーパーヒーロー」たる影響力は肥大し、ほとんど権力者といえるほどの地位が築かれてしまっていたのである。
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■まるで本物の大会を見ているような臨場感
本編にはツール・ド・フランスの実際の大会映像も利用されている。ランスを演じる俳優の「なりきりぶり」も好評を博し、「まるであのときの大会を見ているようだ!」とコアなファンをうならせている。
またこのスキャンダルが明るみになる前に、なんとジェイク・ギレンホール主演で、ランスの栄光を綴った映画が製作されるという話も持ち上がっていたという。ランス・アームストロングとは、それだけ大きな存在感をもった人物だったのである。
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■稀代のカリスマはヒーローか? ペテン師か?
ドーピングを常用しスポーツ界を欺いていたことで、どれだけの人を失望させたかは計り知れない。
しかし、血と汗にじむ超人的なトレーニングをこなし、極限まで身体を追い込んでいってもなお、絶対に超えられない壁を見せつけられたとき、薬物という魔物に手を出してしまう悲壮感に満ちた心理には、どこか厄介な同情心が掻き立てられてしまうのも確かだ。
ランスの尽きせぬ欲望や虚栄心をあぶり出す一方で、慈善活動を精力的にこなし、多くのガン患者に勇気と希望を与えた側面も描く本作。
ヒーローか、それともただのペテン師か …そんな問いを投げかけてくる骨太な一本である。
『疑惑のチャンピオン』は丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国で公開中。
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(取材・文/しらべぇ編集部・フクダかづこ)