【教育コラム】新しい学習指導要領のキーワード

2016/08/04 10:30


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szeyuen/iStock/Thinkstock


■2020年度以降新しい学習指導要領が発動

8月1日、2020年以降小中高で順次実施される予定の新しい学習指導要領について、文部科学相の諮問機関「中央教育審議会」審議まとめ案公表しました。

教育関係者でもない限り、普通、学習指導要領そのものも、ましてやそれを策定するための議論の経緯に関する膨大なお役所文書など読むこともないでしょう。

いくら教育が大切だとわかっていても、私だって教育に関する仕事をしていなければこれだれの文書を全部読んだりはしません。しかし何がどういう方向性で動いているのかだけは、教育関係者でなくても、少なくとも子をもつ親であれば押さえておいたほうがいいと思います。

私自身、まだ膨大な資料をざっと見渡しただけですし、今後これについてのさまざまな意見が出てくると思いますが、ここでは取り急ぎ、私が思う今回の改訂のポイントとキーワードだけ紹介しておこうと思います。

今回の改訂の基本方針は、「時期学習指導要領に向けたこれまでの審議のまとめ(素案)のポイント」という文書に端的に書かれています。「何を学ぶか」ではなく「どのように学ぶか」「何ができるようになるのか」の視点で学習指導要領を改善するということです。

教育の手段と目的を明確化するということです。「当たり前じゃないか」と思う人も多いと思います。でも一方、教育の目的や有効な手段というのは、本来的には誰にもわからないものであるという考え方もあります。

ここでその善し悪しを語るつもりはありません。しかし今回、学習指導要領が手段や目的にまで踏み込んで規定するというのは、じつは非常に画期的なことだということは知っておいたほうが良いでしょう。


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■英語とプログラミングができないと職に就けない!?

そのうえで、今回のキーワードをいくつか挙げてみましょう。

・社会に開かれた教育課程…実社会との関わりを重視するという方針です。


・アクティブ・ラーニング…一方的なレクチャー型授業だけではなく、学習者が主体的に調べたり議論したりしながら学ぶスタイルの学習を推し進めるということです。


・カリキュラム・マネジメント…本来的には各学校のカリキュラムのPDCAサイクルのことです。今回の文書の中では教科の枠を超えた学習に発展させるという意味合いで使われている場合もあるようです。


アクティブ・ラーニングという、時間のかかる方法を導入するわけですが、学習内容の削減は行わないことも明言されています。どのように帳尻を合わせるのか、具体案をつめていく段階で大きな争点になりそうです。

具体的な新しい取り組みとしては、以下のようなことが注目されています。


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■小学校高学年での外国語教育を教科にする

これまでは「聞くこと」「話すこと」が中心だった外国語活動を、「読むこと」「書くこと」を含めた外国語教育として位置づけ直す。年間35時間だった授業数を70時間にする。中学年でも年間35時間程度の外国語活動を行う。

これまで見送られてきた外国語の教科化を推し進める形です。理由は「子供たちが将来どのような職業に就くとしても求められる、外国語で多様な人々とコミュニケーションを図ることができる基礎的な力を育成することが重要」という認識。今後これには反対意見も多く噴出することが予測されます。また、純増する授業時数をどうするのかも大きな問題となります。


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■小学校でプログラミング的思考を育成する

6月に発表された文部科学省の有識者会議のとりまとめを踏まえ、たとえば国語におけるローマ字入力、総合的な学習の時間における検索訓練、社会科における資料活用、算数における図形やグラフの作成、理科における実験・観察記録などにITを活用するとのこと。

英語と同様に「将来どのような職業に就くとしても、時代を超えて普遍的に求められる」という理由。英語とプログラミングが身についていないと職に就けない世の中になるといわんばかりの表現です。


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■高校の「公民」を「公共(仮)」とする

従来の「公民」の目標は、「広い視野に立って、現代の社会について主体的に考察させ、理解を深めさせるとともに、人間としての在り方生き方についての自覚を育て、平和で民主的な国家・社会の有為な形成者として必要な公民としての資質を養う」でした。

「公共」について、今回の文書では、「現代社会の諸課題を捉え考察し、選択・判断するための手掛かりとなる概念や理論を、古今東西の知的蓄積を踏まえて習得するとともに、それらを活用して自立した主体として、他者と協働しつつ国家・社会の形成に参画し、持続可能な社会づくりに向けて必要な力を育む 」と説明されています。

「人間としての在り方生き方についての自覚」を育てる「公民」から「他者と協働しつつ国家・社会の形成に参画」するための「公共」へと、だいぶニュアンスが変わっています。18歳選挙権をきっかけに注目を浴びることになった主権者教育や教育における政治的中立性に関する議論も深く関わってきます。

今後の議論の行方を見守っていきたいものです。

※この記事は全国のFMラジオネットワークJFNの「OH! HAPPY MORNING」のコラボ企画です。記事の更新は隔週木曜日10:30am。記事更新の約10分前から、おおたとしまさがこのラジオで記事と同様の話をおしゃべりします。

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(文/おおたとしまさ

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