サマソニのアリーナは地獄絵図!まるであの名作の世界
8月20日、21日にかけて行われた『SUMMER SONIC 2016(以下、サマソニ)』。今年もなかなかのラインナップで満足感が高かった。
サマソニは東京と大阪の2カ所で開催され、東京はQVCマリンフィールドと幕張メッセ、大阪は舞洲サマーソニック大阪特設会場。
記者は東京・21日に行ったので、そのときの模様を伝えたい。
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■他ジャンルのアーティストのライブを堪能
参加アーティストは日本はもちろん、アメリカやイギリスを始めとした一流ミュージシャンから新参者のバンドまで多数出演。
幕張メッセ内はソニックステージ、レインボーステージなど小さくわかれていて、それぞれ1時間前後のライブを実施。
イギリスはケント州出身のパンク・デュオ「SLAVES」から、マンチェスター南部に位置するストックポートから出た期待の新星ポップ・バンド「BLOSSOMS」など…さまざまなジャンルが目白押しだ。
日本の夢のコラボ、高橋幸宏やコーネリアス(小山田圭吾)を含む贅沢ユニット「METAFIVE」も素晴らしかった。
幕張メッセでは、内部ステージを自由に行き来できるのが魅力的で醍醐味でもある。
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■アリーナの人の多さに驚愕! 人が粒に見える…
マリンフィールドには、大勢の集客が見込まれるビックバンドが登場する。日本では「THE YELLOW MONKEY」や「サカナクション」などだ。
見たところ、アリーナはすでに多くの人々でごった返している。記者は椅子があるスタンド席を確保し、ヘッドライナー(最終演奏者)を観るため、上から下を見下ろす形で待つことにした。
それにしてもアリーナは物凄い人数だ。皆が何かの粒のように見える。前列や中央など、ここから見るとどうなっているのかもわからない。
そこで思わず、この作品を思い出した。
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■まさに地獄絵図! まるで芥川龍之介『蜘蛛の糸』の世界
それは、『芥川龍之介・著/蜘蛛の糸』だ。文庫本になると、たったの5ページの文学作品。物語の出だし途中はこうだ。
「〜この極楽の蓮池の下は、ちょうど地獄の底に当たっておりますから…」
お釈迦様は地獄にいる男・カンダタを救おうと、極楽から蜘蛛の糸を垂れ下げていく。
カンダタは糸をつたって登っていくが、後から大勢の亡者が続いてくるのに気がつき彼らをふるい落とそうとする。その光景を見たお釈迦様は、糸をプツリと切ってしまうのだ。
「〜お釈迦様は極楽の蓮池のふちに立って、この一部始終をじっと見ていらっしゃいました…」
このように終わっていく作品である。
楽しみにしているアーティストを間近で見るため、アリーナ前方や中央でギュウギュウに苦しむ人たち。
背後には大勢のオーディエンスが控えている光景を見て、記者はゆったり席に座わりながら、ちょっとした優越感に浸り生意気にもそんなことを考えた。
ちなみにこの日のヘッドライナーは「RADIOHEAD」。あまりの美しさにお釈迦様は本当にいるのだと思った。
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(文/芥川 奈於)