【内科医が解説】はしかが大流行の恐れ 感染力と合併症が危険
こどもの病気というイメージのある「はしか」。わが国は昨年、「はしか排除状態」とWHOに認定されたばかりですが、海外由来と思われるウイルスによって、再び大流行することが懸念されています。
なぜこれほどメディアを賑わせるのか。はしかの怖さに焦点をあてて、現役内科医である記者が解説します。
■はしかの症状とは
鼻水やせきといったかぜ様症状に加えて、二相性の発熱(いったん解熱後にまた発熱)と、顔面をふくむ全身の発疹がみられることが特徴です。
潜伏期は10日間で、発症してから完全に治るまでも10日前後。ウイルス感染症なので抗生物質は効きません。自然治癒を待ちます。
これだけ聞くとさほど騒ぐ必要はないように思うかもしれませんが、はしかは少し性質が違います。
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■感染力がとてつもなく強い
通常のウイルス感染では、発症まで至らないケース(不顕性感染)がある程度存在しますが、はしかの場合は95%以上が発症します。
感染力の強さの指標として、抗体をもたない集団に感染者が1人まぎれ込んだ場合、12〜18人が発症するとされています。
毎年冬に猛威をふるうインフルエンザですらせいぜい数人。
感染経路は、空気感染(飛沫核感染)、飛沫感染、接触感染とさまざま。とくに空気感染は空気中をただよう微粒子によるので、同じ空間(数十メートル範囲内)にいるだけでうつる危険があります。
こうした理由から、たとえば「1週間で30人超の患者が発生した」という報告は驚きをもってむかえられます。
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■合併症が怖い
はしかになると、およそ3割が合併症を併発。そのうち半分は肺炎ですが、1,000人にひとりは脳炎に。はしかの2大死因です。
脳炎の死亡率は10〜15%と高率で、完全に回復するのは半数。それ以外では麻痺などの後遺症が残ります。特別な治療法はありません。
また数年後に、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という生命予後不良の合併症がみられることもあります。SSPEでは、はしか感染時の症状は軽いことが多いようです。
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■怖い病気だからこそワクチンによる予防が大切
はしかは抗体を持ってさえいれば予防可能な病気です。しかしわが国でのワクチン接種率は低めで、過去にたびたび流行がみられました。
2008年にワクチン政策が見直されてからは接種率が高まり、現在は90%を超えています。この調子でいけば、将来ほぼ制圧される日が来るかもしれません。
注意が必要なのは、現在26歳以上の接種が甘かった世代。はしかワクチン1回打ちでは、抗体を獲得できるのは約95%とされています(現在は2回打ち)。
残りの5%や接種しそこねた人は、その後はしかにかかっていないとすれば、抗体がないまま過ごしていることになります。
また、1回打ちで抗体を獲得できた人でも、はしか患者数が減りウイルスにさらされにくくなった結果、免疫が減弱している可能性があります。
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■病院で「抗体チェック」を
はしかは感染力が極めて高く、重大な合併症を併発しうる恐ろしい病気です。
今年8月、空港やコンサート会場という人がたくさん集まる場所で感染がおきたことから、全国へひろがる可能性が十分あります。
不安があれば病院を受診し、まず抗体の有無をチェックしてもらいましょう。
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(文/しらべぇ編集部・青木マダガスカル)