時速140km越え!スケートボードの世界最速記録がすごい
スケートボードは、日本ではまだ「玩具の延長線上」の見方が強い。
だがアメリカでは市民権を得ていて、ある種の「モビリティー」として定着している。通勤通学に自転車ではなくスケートボードを使う人も多いのだ。
スケートボードは当然ながら人力で走るもの。エンジンがついているわけではない。だから速力もさほど出ないはずだ。
しかし、人間は「限界」に挑戦したがる動物。何事もやってみなければ分からない、ということでこのような挑戦を行った人物がいる。
■時速89マイル!
今月、アメリカのコロラド州でひとつの世界記録が生まれた。
それはダウンヒル・スケートボード世界最速記録。ボーダーのカイル・ウェスターは自分の足以外の動力には一切頼らず、コロラドの山岳地帯を疾走した。その速度は時速89.41マイル、すなわち143.89kmだ。
映像を見ても、これがとてもスケートボードとは思えないほどの速さ。走行音も、まるでモーターレースのようだ。
このダウンヒル・スケートボードという競技は、ただ下り坂を駆け下りるだけではレコードを塗り変えることはできない。ボーダーは空気抵抗を最小限にするため、専用のヘルメットとウェアを身に付ける。コーナリングの際の位置取りも重要。もはやこれは「玩具の延長線上」などではなく、立派なスポーツなのだ。
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■3ヶ月前にも世界レコードが
じつはその3ヶ月前、カナダのケベック州でもダウンヒル・スケートボードの世界最速レコードが樹立されていた。
ボーダーはスウェーデン人のエリック・ルンドバーグ。この時の記録は時速130.63kmだった。先ほどの記録に比べたらかなり劣って見えるが、今年6月の時点ではこれが世界最速。
言い換えれば、カイル・ウェスターはたった3ヶ月前に樹立された記録に、13kmも差をつけたのだ。超人的という他ない。
ところで、考えてみれば我が国日本はダウンヒル・スケートボードをするのに極めて適しているのだ。国土の7割が山地で、急勾配の道路に恵まれている。しかも最先端のテクノロジーを持った国。やろうと思えば、特注のスケートボードを生産して状態良好の道路で記録に臨めるはず。
ただ同時に、日本には道路交通法があるのだ。
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■日本で可能か?
道路交通法76条4項3号には、このような一文がある。
「交通のひんぱんな道路において、球戯をし、ローラースケートをし、又はこれらに類する行為をすること」
76条は禁止行為を掲げた条目だから、少なくともある程度の交通量の道路ではスケートボードはできないと判断すべきだ。
それを考慮しないとしても、スケートボードで世界記録を叩き出せるほどの走行距離を必要とするならば、該当道路を通行止めにしなければならない。我が国の道路は急勾配である分、アメリカやカナダよりも幅が狭い。もし自動車がコースに侵入してきたら、それを避けるのは難しいだろう。
そしてそれ以前に、日本でこのような活動をしたら「倫理的な問題」として批判されてしまう可能性が大きい。エクストリームスポーツがまだ浸透していないのも、要因のひとつとして存在する。
日本から「世界最速のスケートボーダー」が生まれる日は、まだまだ先のことになりそうだ。
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(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一)