診療報酬不正のタレント女医が「3年の医業停止」 処分が甘すぎる?
こんにちは、レイ法律事務所弁護士の松田有加です。
先日、タレント女医としてテレビにも登場していた脇坂英理子さんが、医業停止3年の処分を受けたというニュースがありましたね。
友人と話していたところ、「停止が3年だけなんて短すぎる」という意見がありました。
3年というのは短いのか? 長いのか? 弁護士の立場から見ていきましょう。
◼︎脇坂医師は何をしたのか?
脇坂さんは、自らの経営する美容クリニック「Ricoクリニック」において、診療を繰り返し行ったかのように装って、8つの自治体から不正に診療報酬を約154万円受け取ったとして、今年7月、詐欺罪で有罪判決を受けていました。
その判決としては、懲役3年・執行猶予4年というもの。初犯であることや金額などから執行猶予が付いたものと考えられます。
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◼︎医業停止を決めるのは誰?
脇坂さんは刑事裁判で判決を受けましたが、これを決めるのは裁判官です。ところが、医業停止を決めるのは裁判官ではありません。
医業停止や免許取消などの処分は、厚生労働省の医道審議会という機関の答申を受けて、厚生労働大臣が決めます。
簡単に言うと、刑事事件の判決が確定した後、医業停止などの処分が予定されていることの通知が届きます。
その後、本人から意見や弁明を聞いて、医業停止や免許取消などの処分が決まる、という流れになります。
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◼︎医業停止の長さや免許取消になるかの決め手は?
医業停止の長さや、医業取消にするかどうかを決めるにあたっては、まず…
①刑事事件の判決で言い渡された刑の長さや罰金の額
②刑が執行猶予になったかどうか
が基本となります。
また、とくに医師の立場を利用して行われた犯罪については、医師の業務に関連した犯罪であり、「医師の社会的信用を失墜させる悪質な行為」であるとして、重い処分がされることになってします。
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◼︎医業停止3年は短い? 長い?
医師に対する行政処分として、一番軽いのが「戒告」というものです。これは故意ではなく、過失で犯罪をしてしまった場合に多く適用される処分です。
今回の場合は、医業停止3年の処分となっていますが、じつはこれ、医業停止の中では一番重い処分です。
医業停止は、3年以内の範囲で決定されるもの。これより重い処分となると、「免許取消」ということになります。
少し単純化して考えると、今回は、執行猶予が付いたので、最大の処分である免許取消にするのは重すぎるという判断になると考えられます。
そのため、免許取消ではなく医業停止3年にされたことは、短すぎると言えません。
ただ、医師の立場を利用して公金を詐取した悪質な犯罪であることを考慮すると、重く処罰することが必要、ということになります。
そのため、今回は、事案の悪質性を考慮して、最大限の厳しい判断がなされたと考えていいでしょう。
医業停止になると、医業を行うことが禁止されますが、万一、これに反して行ってしまった場合には、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます(医師法32条)。
もう二度と同じような過ちを繰り返さないで更正されることを願います。
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(文/レイ法律事務所・松田有加弁護士)