担当するジャンルで全然違う編集職 コミック編集者の場合
取り扱うジャンルによって、かなり内容が異なる出版社の編集職。雑誌・文芸の編集者に続いて、今回はコミック担当者のケースを聞いた。
■コミックの編集者
2016年春クールの『重版出来!』(TBS系)は、コミック誌の編集部でひたむきに働く主人公・黒沢心を演じた黒木華の愛らしい演技と、泣けるポイントの多い作品として、視聴者の満足度の高さが評判になった。
実際に国内大手出版社でコミック誌を担当する中堅編集者、Rさんは語る。
「人間模様の部分は、かなりデフォルメされていると感じましたが、ドラマにあったような社内の各部署や書店さんと協力して、作品の人気を盛り上げる…といったことは、リアルにあります。
雑誌編集者は読者が7割、文芸編集者は作家が7割なんですか。コミックは読者の人気に左右されるので、漫画家さんと読者への意識は半々くらいですね」
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■作者よりテーマやジャンル優先
文芸の場合は、作家の人気が部数を大きく左右する「作家買い」が多いが、コミックでは個別の作品やキャラクターに“ファンがつく”傾向が強いことも、特徴的だという。
「出版社やコミック誌自体の特色によっても変わりますが、冒険・野球・推理・恋愛といったテーマ、それにストーリー展開。読者が好きになったり、共感したりできる、登場人物のキャラクター作りが重要です。
読者からの支持が得られないと、最悪の場合は打ち切り――ということもあります。編集者はアンケートの結果や、最近の読者の傾向を分析して漫画家さんに伝えるなど、作品の人気が盛り上がるよう、一緒にアイデアを考えることも多いですよ」
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■担当作家が20人を超えることも
人気作品を手掛けたいのは、どの編集者も同じだが、コミック担当は「長く読者に愛される連載」を作るのが、とりわけ大事な仕事だ。
「メインである1人か2人の人気作家さんに加え、10~20人の若手作家を担当します。
若手というのは持ち込みや賞の応募作品から、編集者として“これは”と思う人を育てる形で、ネームを何度も指導したり、勉強や経験が積めるように担当人気作家さんのアシスタントにつけたりします。
メインの作家さんの漫画が打ち切りになった場合、それ自体も痛手ですが、アシスタントにつけた若手も仕事を失ってしまいます。ひとつの作品に関わる人間が多い分、そこに賭けるものが大きいです」
世界ギネス記録にも認定された『ONE PIECE』(ワンピース)を超える作品を目指し、今も多くの担当編集者と作家が、構想を語り合っているのかもしれない。
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(取材・文/しらべぇ編集部・くはたみほ)