世界普及にも期待 初の外国人将棋棋士カロリーナさんに賞賛の声
対局はもちろん、将棋の世界普及にも尽力してくれることを期待したい。
20日、ポーランド出身の女流棋士カロリーナ・ステチェンスカ女流3級が東京・将棋会館で対局に臨み、貞升南女流初段に勝利。規定により女流2級に昇級し、晴れて女流棋士の仲間入りを果たした。外国出身者がプロになるのは、女流棋士だけでなく、棋士も含めて初めてだ。
ちなみに「女流3級」は期限付きのプロで、期間内に一定の成績を残すことができない場合、その資格を失う。2級以上になれば、規定の成績を下回らない限りプロの女流棋士として活動することができる。
■インターネットで腕を磨く
カロリーナ新女流2級は、独学で日本語を覚えたうえ、駒の動かし方を習得。その後はインターネット将棋サイトで対局を重ね、将棋大会に出場した。そして日本のプロ棋士を破るなどして、頭角を現す。
その後女流棋士になることを決意したカロリーナ女流は、日本の山梨学院大学に編入する。育成機関である研修会に参加し、仮のプロ資格である女流3級位を取得。2級を目指して棋戦に出場していた。
北欧はチェスが盛んであるため、将棋に入りやすいといわれるものの、駒の漢字を読む能力や「一度取った相手の駒を自分の戦力として使う」独特の文化を理解するのはたやすいことではない。ちなみに駒の動きについては、以下のような形で習得したそうだ。
カロリーナ女流による漢字の形の覚え方。玉:真ん中の十字が王冠に付いてる十字っぽい。
金:屋根のある建物、金閣寺。
銀:金の横にRが付いて、silverの発音のrと結び付ける。
桂:乗馬競技で障害物を跳び越える馬のイメージ。
香:縦棒と横の払いから、弓矢のイメージ。— 9 (@Silver_up_to5H) December 11, 2016
カロリーナ女流の漢字の覚え方の続き)飛:空を往く戦車のイメージ。
角:中央の四角いのが、斜め四方向に一生懸命走り回るイメージ。(これが一番面白かった)
歩:上の四画までが帽子で、五画目が鼻、六、七画目が目、八画目がニヤッとしてる口で、兵士の顔のイメージ。— 9 (@Silver_up_to5H) December 11, 2016
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■将棋を始めたきっかけは漫画『NARUTO』
カロリーナ女流が将棋を始めたきっかけは、愛読していた漫画『NARUTO』だそう。将棋を題材にした物語ではなく、アクション中心なのだが、ワンシーンにでた対局の様子が忘れられなかったという。これは非常に珍しいケースだ。
一般的にも稀で、しらべぇ編集部が全国の20代〜60代の男女1,362名に「漫画やドラマがきっかけで始めたスポーツがある否か」調査を実施したところ、「ある」と答えたのはわずか9.0%。
運命がカロリーナ女流を導いたということなのだろうか。
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■将棋ファンに聞いてみた
将棋ファンのSさんに感想を聞いてみた。
「400年以上前から日本に存在する将棋が、漫画とネットを通じてポーランドに伝わり、女流プロ棋士が誕生するとは驚きです。
将棋といえばかつては祖父・祖母や両親から教わり、盤に向かって勉強しながら道場に通うのが一般的な勉強法で、地方出身者は相手が見つからず苦労することもありました。
しかし近年はネット対局で腕を磨くことができるため、地方の格差どころか海外からでもカロリーナ女流のようにプロになることができる。
男性棋士でもネットやコンピュータとの対局で強くなった棋士はたくさんいますし、新たな形だと思います。最近暗い話題ばかりがクローズアップされる将棋界ですが、久しぶりの明るい話題だなと感じています」
今後女流外国人棋士初のタイトルホルダーを目指すものと思われるカロリーナ・ステチェンスカ女流2級。自身のTwitterでも、今後に向け意欲を示している。
ありがとうございます。これからも頑張りたいと思います。 Thank you for your support. I will do my best as ladies pro.
— Karolina Styczyńska (Shogi Harbour) (@oneye) February 20, 2017
対局はもちろん、将棋の世界普及にも尽力してくれることを期待したい。
(取材・文/しらべぇ編集部・佐藤 俊治)
対象:全国20代~60代の男女1,362名(有効回答数)