なぜ『陸王』はヒットした? 「サラリーマンのファンタジー」を紐解く
『陸王』はなぜヒットしている? 「サラリーマンにとってのファンタジー」などの声から分析。
TBS系で毎週日曜日に放送中のドラマ『日曜劇場 陸王』が面白い。
役所広司や寺尾聰など名優の熱演が際立つ一方で、竹内涼真や山崎賢人が若者らしい葛藤を瑞々しく魅せる。このように幅広い世代の人たちが感情移入できる作りは、ここ数年で作られた池井戸潤ドラマの中でも珠玉の出来だろう。
だが、ヒットの裏にはキャストやストーリー、演技と言ったコンテンツ面の要因以外にも、今の日本社会の空気感もあると言っていい。本記事ではツイッターの声やデータをもとに、『陸王』ヒットの理由を紐解いていきたい。
①『陸王』は現代日本のファンタジーである
まずネットで多く観られるのは本作が現代日本のサラリーマンにとってある種のファンタジーであるということ。
倒産の危機に陥った中小企業が新商品を開発することで再起を果たすというストーリーの本作だが、今の時代、これを現実で行うのはかなり難しい。
むしろ、現実では努力が報われることは少なく、嫌な人間は嫌なままで終わり、新商品の開発は予算がないという理由で打ち切られてしまうものだ。
だからこそ、ネットではその虚構、ファンタジー性に強い魅力を感じ、夢を見ている人が多く見られている。
池井戸さんの明るい方の本は本当にサラリーマンにとってのファンタジーだと思って見てる。 真面目にコツコツやって来た会社が高い技術を生かして新しいことを始めて少しずつ認められて仲間が増えて…なんて完全に現代のRPGだと思う、陸王も、下町ロケットもそう。
— ゆき (@yk2020_) November 21, 2017
過酷な状況下でやりたくもない仕事を生活のために心を無にして日々こなしている人が多い世の中で、夢に向かって生き生きと仕事をし、信じる者は必ず報われる世界を描く「陸王」はサラリーマンにとっての究極のファンタジーなんだろうなと思う。
— 深爪 (@fukazume_taro) November 21, 2017
一方、ツイッターではこんな声も。思わず考えさせられる意見である。
https://twitter.com/migitika7/status/932246207535071232
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②明るい気持ちになりたい日曜夜にピッタリ
また、放送枠について指摘する声もネットでは多く見られる。一週間の終わりである日曜夜という時間帯は、つまり一週間が始まる月曜の前日。
「明るい気持ちになって新しい週を迎えたい」という視聴者の心理が、視聴につながっているようだ。
#陸王 ドキドキすぎる。日曜夜というのがまた良いな。明日から頑張る気になれる。
— moisachi (@moto_tracer) November 19, 2017
https://twitter.com/wanpka1/status/932239615276093440
ちなみに、しらべぇ編集部が以前行った調査では「重いドラマは、重いという理由だけで見たくない」と答えたのは全体の3分の1に及んでいた。
重く、暗い作品を観ていられたのはある意味昔の話。人口が減少し、経済的にも徐々に先細りしていく今の日本においては、救いのある作品のほうが支持される傾向にあるのだ。
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③究極の、でも心地よい予定調和
本作は基本的に善人と悪人がわかりやすく分けて作られており、だからこそとても見やすい仕上がりになっている。(もちろん、悪人にも彼らなりの信念や正義もあったりするのだが、必要以上に想像力をめぐらせる必要がないのだ)
同じく高視聴率を記録しているドラマ『ドクターX』(テレビ朝日系)も、「絶対に失敗しないフリーランスの天才外科医が、色んな人間関係、いざこざをその腕前で解決する」というフォーマットが完成されている。
視聴者に必要以上の負担を強いらせず、最終的に正義が勝つ(勧善懲悪)になるのは、時代劇が長く愛されるこの国にとっては、古びない作り方と言えるだろう。
大変な時代だからこそ求心力を持つ「サラリーマンにとってのファンタジー」である本作。視聴者を勇気づけ、明日への活力を与える物語の後半戦から目が離せない。
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(文/しらべぇ編集部・Sirabee編集部)
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