トリック解明より…『刑事ゆがみ』高評価は切なさと繊細な心理描写
浅野忠信・神木隆之介らの演技力が可能にした、繊細な心理描写が大きな魅力
今夜10時に、第8話を迎える『刑事ゆがみ』(フジテレビ系)。
浅野忠信演じる刑事・弓神適当と、神木隆之介演じる若手刑事・羽生虎夫の「新しいバディもの」が、ディープなドラマウォッチャーまで魅了し、回を重ねるごとに評価を上げている。
豪華ゲストの「無駄遣い」ネタも楽しいが、高評価に繋がっているのは刑事ドラマ定番の「犯人捜し」や「トリックの解明」より、真相の「切なさ」と、そこに迫るプロセスでの「心理描写」だ。
画像をもっと見る■犯人フラグに翻弄された序盤
第1話の真犯人は、羽生の中学時代の同級生で再会に心躍らせていた、委員長こと駅員・坂木望(杉咲花)。
真相に辿り着くまで、痴漢疑惑の男・沢谷(岡田義徳)や被害者・押田マイ(小倉優香)の友人である倉間藍子(大後寿々花)、沢谷の妻・薫子(小倉優子)など、次々と怪しい人物が容疑者となる。
しかし、羽生と望が“いい感じ”になるのと比例して、視聴者も「委員長に犯人フラグが…」コメントが増加。弓神のトラップに掛かり、羽生が望に手錠をかけるという「見たくなかった」切ない展開を迎える。
その過程には、「犯人であってほしくない」と思う羽生や、自分の正義を疑わない望自身にも、繊細な対応をする弓神の姿があった。
そして第2話では、「事件ではなく、事故だった」という幕引き。中学校の国語教師・早杉千里(水野美紀)と、その教え子であり、教育実習をしていた大学生・打越将也(中川大志)の純愛が真相だった。
しかし、この回では多くのドラマファンを歓喜させた、前科3犯の怪しすぎる下着泥棒・郷亀哲史(斎藤工)がブラフとして登場。
この郷亀のキャラクターが、アーティスト気質の意識高い系下着泥棒という、斎藤工のためにあるような役だっただけでなく、取調室で羽生と小学生男子よろしく互いに「バーカ! バーカ!」言い合うシーンには、悶絶する視聴者が続出した。
また、シーンは短かったが打越の元カノ・森郁美役として、同じフジテレビ系ドラマ『民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜』で、藤堂誠(高橋一生)に呼び出される風俗嬢・莉子役でも話題の今田美桜が出演。
犯人「じゃない」出演者にも、かなり贅沢なキャストが多いことを印象付けた回だった。
関連記事:『ダウンタウンなう』岡田結実、事務所移籍の真相を激白 退所の理由は…
■犯人捜しやトリックよりも
犯人は誰なのか? そこにウェイトを置いて観たのは、恐らく第2話くらいまで…という人は多いはず。
第3話では、被害者だったとはいえ、聖人君子のような羽生の尊敬する元上司・真下誠(寺脇康文)巡査部長は、はじめから怪しい。
また、事情があったとはいえ、真下に大怪我を負わせた犯人ということでは、堀田剛(柳俊太郎)の決め打ち。
この回でも、尊敬している真下を逮捕する羽生の気持ちを考えた弓神の行動が、薬で眠らせて現場に投棄(?)という暴挙であっても、優しさ感じさせる。
第4話では、正当防衛を主張していたとはいえ、思い余って大山昇(姜暢雄)の殺人を計画した主犯は、堤祥子(高梨臨)。
婚約者を殺されたという立場だった、祥子の同僚・高遠玲奈(池端レイナ)は共犯者であり、突き飛ばした実行犯に。しかし、そこに至った理由について、同性愛といった単語を一切出さずに表現しきった点も巧みで、「きれいな百合回」として盛り上がった。
なお、犯人二人の後輩OL役として登場した飯杉真澄(飯豊まりえ)が、「いるいる。こういう子」という演技でストーリーに厚みを出したほか、「絶対に無名な人でもよかったろう」な警備員役が前野朋哉という豪華布陣。
このあたりまでで、ファンはすっかり「今週の無駄遣いは?」ネタだけでなく、「犯人フラグより、ラストの心理描写」を楽しみにするモードに。
評価がグイグイと上がり始めたのは、こうした流れの中で、バディものとしての「新しさ」だけでなく、弓神が真相を解き明かす際に見せる優しさや繊細さに、「大きな魅力がある」と共通認識が広がった面も、ポイントとして挙げられるだろう。