長岡三島ならではの個性にこだわる 地酒蔵としての使命を語る『想天坊』の蔵

『想天坊』『じゃんげ』といった変わった名前のお酒には、深い郷土愛が込められている。

想天坊

創業明和2年(1765年)の河忠酒造があるのは、新潟県のほぼ中央、西山連山の麓に位置する長岡市脇野町(旧三島町)。緑に抱かれた静かな町だ。


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■酒銘は地元を想う気持ちから

「江戸中期から天領だった地で、このあたりには造り酒屋が7~8軒あったようです」と語るのは、9代目当主の河内忠之さん。そして、この長岡三島ならではの酒を造るのが、地酒蔵としての使命と断言する。

主要銘柄は『想天坊』。一度聞いたらなかなか忘れられない名前だが、じつは地元の昔話に登場する山の名前だとか。

「越後の山々は昔、修験場だったので山伏が籠もる坊があったんです」とのことだが、 想天坊もそうした山のひとつだったのだろう。

天を想う坊(人、町)の意味から、「蔵人の想いと天の恵みで醸した酒」とのメッセージを込めて採用したという。


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■もう一銘柄も変わった名前

想天坊

河忠酒造がつくる、もうひとつの銘柄は『じゃんげ』。

「蛇が逃げると書いて、じゃんげと読みます。蔵の裏山・西山山中には『蛇逃の滝』があって、この名も伝説に由来しています」


高さ20mほどのこの滝は、あまりに水の勢いが激しくて、蛇も寄り付かないからという説と、この滝の近くを住処にしていた大蛇が、黒猫と争った結果、負けて逃げ出したのでこの名がついたという説がある。

辛口のシリーズということで、一般的に言われる「鬼殺し」といったニュアンスで、さらにそこから連想。「鬼をも殺すような辛さ」→ 「蛇も逃げ出す辛さ」と土地の逸話に引っ掛けて名づけた。

「『想天坊』も『じゃんげ』も、地元以外の人が目にしたら何のことかと思うでしょう。この土地に関心を持ってほしいんです」と話す河内さんの言葉には、深い郷土愛がにじむ。

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■個性豊かな越後流「淡麗旨口」を掲げて

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