辛口ながら辛さを感じさせない『越乃景虎』 豪雪地帯・栃尾の老舗蔵にその理由を探る

名将・上杉謙信の名「長尾景虎」にちなみ、超辛口の酒で知られる。

越乃景虎

 「料理の邪魔をせず、喉元をすっと落ちていくような酒を味わってもらいたい。酒は脇役でいい」、これが『越乃景虎』のコンセプトだ。


画像をもっと見る

 

■先代から娘に受け継がれる経営理念

諸橋酒造の蔵は長岡市の東部、魚沼丘陵と越後山脈に挟まれた栃尾盆地にある。現在は長岡市だが合併前は栃尾市と呼ばれた。

栃尾と言えば、越後が輩出した名将・上杉謙信が青年期を過ごした地。謙信が当時名乗っていた「長尾景虎」にあやかり、銘酒『越乃景虎』は生まれた。

「1969年の大河ドラマ『天と地と』で『景虎』が生まれ、2009年の『天地人』でも、おかげさまで話題になりました。だからと言って、製造量を大幅に増やすことはしなかったのです」


急逝した先代・諸橋乕夫氏の跡を継ぎ、2016年に7代目蔵元に就任した諸橋麻貴さんが語った。

「父である先代はいつも、身の丈に合った酒造りをしなさいと言っていました。それは、愛されている味を変えない、目の届く範囲の規模で、良いものを造ること。


『越乃景虎』は全量ほぼ手造りなので、この蔵の大きさでは、今が精一杯なんです」


60年あまり蔵を守ってきた先代と、歴代の杜氏によって築き上げられた蔵の味を崩さずに継承する。これが蔵の変わらぬ信念、そして自分の使命、と新社長は胸に刻んでいるようだった。


関連記事:海老蔵、ゲームを子供にやらせるか悩む コメント殺到に感謝

 

■地元に愛される普通酒こそ手を抜くな

越乃景虎

創業は江戸時代の弘化4(1847)年。四方を山に囲まれた栃尾は新潟有数の豪雪地帯であり、冬は鈴木牧之の『北越雪譜』さながらの世界となる。その厳しい自然環境にあって、170年も地元に親しまれる酒を造り続けてきた。

「高級酒がおいしいのは当たり前。毎日飲む普通酒だからこそ決して手を抜かず造る、と先代は常々言っていました」 と、諸橋さん。

地元のお客様に親しまれている普通酒こそ、本物をお届けすべき。この想いもまた代々受け継がれてきた理念のようだ。

それでは良い酒を造る上で大切にしていることは何か、との問いに、造りの現場で指揮をとる製造部長の田中政之さんから、

「人の和、高い技術力はもちろんですが、常に製造場内を清潔に保ち、いい環境で酒造りをするように心がけています」


伝統的和様建築の風格ある建物は、製造場内のみならず、土間も廊下もすがすがしく清められていて印象に残った。

次ページ
■自然の恩恵を味方につけて

この記事の画像(10枚)