『姫の井』といえば「もち米四段仕込み」 一徹に寒造りにこだわる女性蔵元
新潟・柏崎で、もち米を使った全国でもまれな酒造りを行っている。
『姫の井』の石塚酒造は柏崎市街を離れた山間の高柳地区にある。
雪深い高柳は、かやぶき屋根の集落で町おこしをしていることでも知られ、また特産品である門出(かどいで)和紙は、新潟の人気酒のラベルに用いられることで話題になった。
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■地域と蔵は一心同体
「当蔵では、積雪が2m近くになる冬季に、手造りで日本酒を造っています」と話すのは代表取締役の石塚政子さん。
西には黒姫山、東に連なるのは高耕地山・薬師山・天王山。ほぼ中央を貫流する鯖石川沿いの小規模な平坦地と、山腹の比較的平らな山間に19の集落が点在する高柳町。
当然自然環境に恵まれ、酒造りの環境も秀でている。雪がもたらす澄んだ空気と雪解け水、酒造期間の安定した気温と湿度、雪深い黒姫山のブナ林から湧き出る水の恵みを受け、棚田で育つ優れた米。
「地域と蔵は一心同体。『姫の井』は高柳地区で生まれる味なのです」と、石塚社長の郷土愛は深い。
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■「辛い酒」と「旨い酒」で激動の時代に耐える
石塚酒造の歴史は元禄時代(1700年頃)に遡る。庄屋を務めた旧家・村山家が酒造りを始めたもので、村山家が景観を整えた京都風庭園の「貞観園」には、酒道具を洗ったとされる池が現在も残っている。
変遷を経て1912年に高柳酒造場として発足。
「祖父・義父と代を重ね『辛い酒 山の井』『旨い酒 姫の井』と戦中の激動にも耐え、酒造り一筋に精進して参りました。その後、1968年に3代目となった主人が石塚酒造株式会社を設立。
祖父の時代から造り続けているもち米四段仕込みを継承して頑固一徹、変えることなく守り続けていましたが、2012年に他界したため、亡夫の想いを引き継ぎ現在の職務に就いた次第です」
と、石塚社長は蔵の歴史を振り返った。