小説にも登場する野積杜氏の里で 少数精鋭のチームで造る『越乃八豊』の蔵
野積杜氏は、宮尾登美子の小説『蔵』にも登場。
■少数精鋭のチームワーク
「全体的に大事にしているのは、きれいな味わいです。そのために、設備上の制約もあってのことですが、醪の日数は短めにしています。麹造りも甘くならないように注意しているんです」と西島杜氏。
森谷社長はそんな西島さんを職人気質と評価する。
「杜氏は本来、集団をまとめるのが一番の仕事。杜氏を中心にした人の和の大切さは、西島君も蔵の中で学んできたはず。ここは少数精鋭だから、自らの背中を見せつつみんなを統率してもらいたい」と、社長は期待をのぞかせる。
現在、造りは5人体制。その中にはなんと、西島杜氏と同じ吉川高校卒業の先輩もいるそうだ。唯一の女性蔵人ながら頼もしく、しかも女性目線で製造チームに貢献しているという。なんだか和やかな造りの現場を想像させられた。
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■「八」のように末広がりに
こうして越後酒造場では、昔から変わらない手造り主体の野積流で、酒造りが行われている。 主要銘柄は新会社設立時に誕生した『越乃八豊(はっぽう)』。八豊のいわれについては、社長が語ってくれた。
「このあたりの地名はかつて豊栄(とよさか)と呼ばれていたんです。それとこの蔵の創業時の名前が八田酒造場だったことから、『越乃八豊』の銘柄が生れました」
お客様と蔵が八のように末広がりに、共に豊かになることを願っての銘柄ともいう。
もうひとつ、創業時からの銘柄に『甘雨(かんう)』がある。ほどよいときに降って草木を潤し育てる雨、つまり慈雨のことで、戊辰戦争のとき農民有志を組織し北辰隊を指揮した地元の志士、遠藤七郎の雅号に由来。
天地陰陽の気が調和すると天から降るという「甘露」を思わせる名前だが、五百万石とこしいぶきを使い、キレはあるもののまろやかで口当たりのいい酒に仕上がっているという。